4番&キャプテン1号で試合を決めた。巨人坂本勇人内野手(26)が、今季1号となる決勝の2ランを放った。0-0で迎えた7回無死一塁、ヤクルト小川のカットボールを左中間席にたたき込んだ。左ふくらはぎの張りで8年ぶりに登録を抹消され、2週間のファーム調整を経て、13日の広島戦から1軍に昇格。復帰3戦目、試合前に原監督からも直接指導を受け、価値ある1発で応えた。

 いつもの位置に、バットはなかった。坂本はバットを長年培った上段から、やや下げた位置で振り抜いた。4番として、主将として、初めて回るベース1周に笑みがあふれた。「久しぶりに気持ちのいいバッティングだった」。試合開始の3時間前、原監督とブルペンでフォームの改造に励んだ。「本当にいい時間をいただいた」。40試合目での今季1号に込めたのは、周囲への恩返しだった。

 年齢では若手だが、主将の肩書を背負った以上、自らのエゴや考えは二の次に置いた。4月28日の中日戦、左ふくらはぎの張りで途中交代した。抹消か、強行か-。その夜、自身の驚異的な回復を祈る一方で、冷静に自分の心に問うた。

 坂本 このままの状態なら、いつものようにプレーはできなくなる。試合には出たいけど、そんな中で出るのは、自分のエゴなんじゃないか。野球はチームプレー。迷惑をかけると思ったなら、言わないと。

 2年目にレギュラーに定着して以降、試合に出続けることが自身のポリシーだった。思いを巡らせる中で時計の針は、自然と過ぎた。翌日、状態は好転せず、原監督、トレーナーとの話し合いで8年ぶりの抹消が決まった。「チームに申し訳ないです」。ベストの状態で戻ると決心した。

 1軍を離れ、最短での復帰を目標にリハビリに励んだ。1軍がナイターの日に、午後6~7時に食べる夕食は、違和感たっぷりだったが、体は正直だった。「シーズン中、おなかの調子がいいことなんてないのに、なぜか今はすごくいいんです。不思議ですよね」。毎朝6時半に起床。規則正しく過ごす中での食事はおいしく感じた。

 ファームでの2週間、芽生えたのは、野球への飢えだった。「やっぱり試合に出てないと、つまらないですね。何もかもが。早く戻りたいです」。復帰後、起用されたのは離脱前と同じ4番だった。「4番とは思ってなかった。何とか監督の期待に応えたいと思った」。背番号6には、グラウンドで見せる笑顔が一番良く似合う。【久保賢吾】

 ▼4番坂本が決勝2ラン。今季の巨人は40試合で坂本、阿部、大田、中井の4人が4番に座ったが、4番で本塁打は坂本が初めて。今季の12球団の4番弾では最も遅い1発となった。2リーグ制後、巨人の4番が開幕40試合目で初アーチは、53年7月11日の59試合目(川上)に次ぎ、52年5月15日の40試合目(川上)と並んで2番目に遅いペースとなる。

 ▼坂本が今季初本塁打。プロ2年目の08年から8年連続で本塁打を放っているが、チーム40試合目での1発は12年の13試合目を抜いて最も遅い初アーチだ。坂本は小川から通算3本目(すべて2ラン)。小川から3本塁打はブランコ(オリックス)と並んで最多タイで、3年連続は坂本だけ。巨人は小川に通算8試合で0勝3敗とかもにされていたが、キラー坂本の1発で初めて土をつけた。