「ハマの番長」が自慢の“マイク”で金字塔を打ち立てた。DeNA三浦大輔投手(41)がヤクルト戦に先発。2回2死から中前に今季初安打を放った。通算118本目で、王らの22年連続を抜き、張本、衣笠らに並ぶ歴代5位タイの23年連続安打とした。5日ヤクルト戦での今季初勝利で、23年連続勝利のプロ野球タイ記録をマークしたベテラン右腕が、今度は打撃で球史に名前を刻んだ。投げても8回4安打無失点の快投で2勝目を挙げ、球団史上初の8カード連続勝ち越しに望みをつないだ。

 「D.MIURA」が、こだわりの相棒で「世界の王超え」を成し遂げた。2回2死走者なし。カウント0-2からの3球目だった。三浦が、ヤクルト新垣の143キロ外角直球を中前にはじき返した。打者顔負けのスイングでプロ入り2年目から続く連続シーズン安打を23年に伸ばした。「23年って言っても(通算118安打は)王さんが1年で打つ安打数だし、比べたら失礼」と謙遜しながらも、この日、75回目の誕生日だった王貞治を超えた。

 9人目の打者としてバットに強いこだわりを持つ。白木のアッシュ材に焼き目を入れ、アンティーク調に加工。最大の特徴は「白テープだよ。理由は、あれだよ、あれ。分かるだろ?」と、大ファンの歌手矢沢永吉が愛用する白いテープを巻いたマイクスタンドをイメージしている。背中にも矢沢魂が宿っている。「『E.YAZAWA』でしょ。中学2年の時に、初めて『SOMEBODY’S NIGHT』を聴いて、そこからとりこになった。かっこいいなぁ」とチームに同姓はいないがユニホームは「D.MIURA」を貫く。

 本職の片隅でこだわり続けてきた「9人目打者」が、球界のレジェンドたちの中で異質の輝きを放つ。「投手も野手も同じ。打席に立ったら塁に出ることだけを考える」。この日もチーム2本目の安打で打線に勢いをもたらした。主砲筒香の2打席連続アーチも、決して無関係ではない。

 連敗ストッパーとして臨んだマウンドでもベテランの貫禄は十分だった。「連勝中でも連敗中でも、その試合で勝つことだけしか考えていない」と邪念を振り払い、8回4安打無失点の快投劇。最大のピンチだった8回2死二、三塁では、上田を外角に沈むフォークで遊飛に仕留め「自分でまいた種を自分でケツを拭けた。最後の踏ん張りどころだった」と振り返った。

 試合後、ベンチ前で抱き寄せて祝福した中畑監督も41歳の大ベテランを大絶賛。「今日はこの後の戦いに向けて大きな分岐点だった。その中でつけいる隙のない、素晴らしい投球で連敗を止めてくれた。うちの屋台骨を背負っている投手だと感じた。すごいよ」と尊敬のまなざしで感謝の意を込めた。まさに、打って、投げてのフル回転に三浦は「ヒットも出て、勝てて良かった」と、額ににじむ汗を気持ちよさそうに拭った。【為田聡史】

 ▼三浦が2回に中前へ今季初安打。プロ2年目からの連続シーズン安打を23年に伸ばし、張本(ロッテ)衣笠(広島)門田(ダイエー)川相(中日)に並ぶプロ野球5位タイとした。投手では既に三浦が最長。投手で20年以上は他に、56~76年米田(近鉄)53~73年小山(大洋)が21年連続、50~69年金田(巨人)が20年連続で安打を放っている。

 ◆大リーグでは 投手の23年連続安打は、86~08年にカブス、ブレーブスなどで通算355勝を挙げたグレグ・マダックスだけがマークしている。マダックスも勝利と安打を23年続けて記録した。