楽天松井裕樹投手(19)が、西武11回戦(西武プリンスドーム)で快挙を達成した。2点リードの9回に登板し、1番から始まる好打順を1三振を含む3者凡退にあっさりと退け10セーブ目をマークした。高卒2年目での2ケタ到達は4人目だが、左腕では初めて。また最速であり、失敗なしでの記録も過去にない金字塔となった。

 見下ろしているように見えた。首位打者を争う秋山、浅村にベテラン栗山を相手にしても、高卒2年目の松井裕は堂々と向かっていった。15球のうちスライダーは2球だけ。武器のチェンジアップは1球も投げない。最速149キロの速球で押し通した。「嶋さんのサインですけど、僕もいいと思って投げました」。最後は浅村を148キロで空振りさせた。しかし10セーブについては「それを目標にすることはありえないけど節目ではあります」と、もっと先を見据えた。

 見ているのは相手打者だけではない。味方の守備陣形も見えている。秋山のカウント1-2では、三塁西田に守備位置について注意を促した。「話せないんですけど、カンです」と明かした。追い込まれると逆方向への打撃がうまい秋山への対策だろう。

 橋上ヘッドコーチは春季キャンプの時点で成長を感じ取っていた。「小さい割に角度がある。横の角度もね。最近クロスファイアを投げられる左腕が少ないんだ」と評価していた。浅村の3球目に146キロで懐をえぐっていた。もうひとつの特徴がチェンジアップだ。「左の速球派は石井一久とかスライダーが武器というのがほとんど。チェンジアップは軟投派に多い」と、過去に類のない本格左腕と認める。

 試合後は26日から始まる阪神3連戦に向けて大阪へ移動した。高2の夏に1試合22奪三振の新記録を打ち立てた甲子園が舞台となる。「過去のことですが、人生の分岐点になったことは確か。楽しんでいいピッチングができたらいいです」と言った。

 大久保監督にとっては戦略的に松井裕がさらに重要度を増す。「セ・リーグは1点を取りにいくより、1点もやらないことが大切。裕樹はもちろん大きい」と言う。今や「アイツでダメならしょうがない」と考えて送り出す守護神に成長した。【矢後洋一】

 ▼松井裕が今季10セーブ目を挙げた。高卒1年目で2桁セーブを記録した投手はなく、高卒2年目の2桁セーブは79年小松(中日)85年渡辺久(西武)95年平井(オリックス)に次いで4人目だ。松井裕はセーブが付く条件で登板した試合にすべてセーブを挙げ、同点で登板した試合も無失点。高卒2年目の投手が5月中に10セーブを記録したのが初めてなら、セーブ失敗なしで10セーブに到達も初めてだ。95年に27セーブを記録した平井は救援での15勝を合わせ42セーブポイントで最優秀救援のタイトルを獲得したが、松井裕は何セーブできるか。