「ザ・巨人」で「日本生命セ・パ交流戦」がスタートだ。覇者が誇る看板トリオが本塁打をそろえ、福島・郡山での西武戦に完勝した。3回、坂本勇人内野手(26)が3号2ラン。4回に長野久義外野手(30)が3号2ランで続くと、5回には阿部慎之助内野手(36)が2号2ランで続いた。4連勝で貯金を今季最多の7に伸ばし、原辰徳監督(56)の通算900勝に大輪の花を添えた。

 指揮官を祝福する、極上の演出だった。坂本、長野、阿部。花火師たちが、郡山の夜空に3発も打ち上げた。「打つべき人がしっかり打った。打球も、まさに“プロの中のプロ”の打球だった」。12年の年月を経て重ねた「900」の勝利は金看板が決めた。

 先陣は坂本だった。3回1死一塁、西武十亀のカーブを左翼席に運んだ。2試合連続の3号2ランで勢いづけ、6、7回にも適時打で計4安打5打点。「今日は終わったこと。切り替えて、やっていきます」。大当たりに満足せず、前進する姿勢は原監督の下で身に付けた。

 プロ入り時から、大将は原監督だった。1年目だった07年の代打決勝打、08年のレギュラー奪取、昨オフの主将就任。節目はいつも、指揮官の決断で決まった。その間、6度のリーグ優勝に2度の日本一。球界を代表する遊撃手に成長したが、妥協を嫌う原監督は、高みを求め続けた。

 坂本 監督はどんな選手でも特別扱いせずに、厳しく接する。高校から入った僕に、プロの勝負の厳しさ、難しさを教えてくれた。

 4回に3号2ランを放った長野、5回に2号2ランを放った阿部も、同じだった。実力至上主義を通す原監督の哲学が浸透する。ともに「勝てたことが良かった」と声をそろえたのは必然だった。

 何度も助けられ、歓喜を分かち合った3人が活躍した。原監督は試合前「西武打線は振れている。すごいよな。うちは水鉄砲打線。長老の阿部はヨボヨボしてる」と、ノックバットをつえ替わりにおどけた。本音は面々がかわいく、頼もしく感じている。交流戦前に「先陣を切りつつ、大将の役割もしてほしい」と期待した「サカチョー」が打ち上げ、最後は“長老”阿部が仕上げた。

 花束を受け取った原監督は、笑顔でスタンドに頭を下げた。「いいスタートが切れた」と評価し、900勝目には「自分のことであって、自分のことではないね。選手をはじめ、みなさん全員で900という数字を積み重ねさせていただいた」と感謝した。求めるのは個ではなく、チームの勝利。その先に、3年ぶり日本一奪回への道が開ける。【久保賢吾】

 ▼原監督が史上14人目の監督通算900勝を達成した。巨人の監督で900勝以上は、川上監督1066勝、長嶋監督1034勝に次いで3人目だ。原監督の初勝利は、02年4月3日中日戦(4試合目)で、1621試合目で到達。水原監督1436試合、鶴岡監督1489試合、川上監督1556試合、三原監督1579試合に次ぐ5位のスピードで、長嶋監督の1742試合より121試合早く達成した。川上監督は72年、長嶋監督は00年に900勝を記録したが、2人ともその年は日本一。原監督も2人に続けるか。