あと1死、あと1球から逆転満塁弾を食らうなんて…。虎の守護神、呉昇桓投手(32)が「日本生命セ・パ交流戦」のロッテ戦で1点リードを守りきれなかった。9回に満塁弾を浴びて4失点で今季初黒星。甲子園で立て直すはずが、チームは3連敗。リーグ4位に滑り落ちた。この3連敗…1発に沈むシーンが多すぎるよ…。

 守護神呉昇桓は首をひねり、下を向いた。甲子園に響き渡った「あと1球」の大声援は、悲鳴に変わっていた。目の前から一瞬にして、勝利の2文字が消えた。来日2年目で初めて呉昇桓が満塁弾に沈んだ。

 2死走者なしからのどんでん返しだった。1点リードの9回。あっさりと2死を奪った。だが、根元に中前打を打たれると、勝利への計算が狂い始めた。1番清田に遊撃内野安打。鈴木に四球。あと1死の状況は、一打逆転という危機を同時にはらむようになった。この日、2安打の3番角中と相対。フルカウントからの9球目だ。136キロスライダーが内角高めに浮いた。鋭い打球を前進守備をしていた右翼福留が追っていく。しかし、その足はピタリと止まった。逆転のグラウンドスラムだった。

 甲子園に怒号が飛び交った。右翼スタンドからは紙コップが投げ込まれた。呉昇桓は「自分の責任。ああいう状況を作ってしまったことが、今日の反省です」。口数少なくクラブハウスへ姿を消した。

 今季21試合目の登板で2本目の被弾。今季初黒星を喫した。今年は3者凡退に抑えた試合は、わずか4試合。走者を背負っても崩れなかった粘り強さがウソのようだ。“神話”も崩れた。満塁には強く、昨年から試合前まで9度の満塁危機をすべてを凡退で乗り越えていたが、瀬戸際での強さも影を潜めた。

 和田監督は「2死からやな。(鈴木への)四球が一番痛かった。(角中の場面は)あそこからなかなかボール球を投げられないカウントになってしまったからね」と指摘。それでも「響かせたらあかん。痛いのは痛いけど、明日もゲームはある。こういう負けを乗り越えていかないと」。4連勝スタートした交流戦だが、痛恨被弾が止まらない。前カード、敵地での西武戦。5月30日は西武中村に2発食らっての敗戦。同31日も逆転3ランを浴びた。聖地に戻って立て直すはずが、またも1発に泣いての3連敗だ。ロッテなどと交流戦1位で並んでいたが、同3位タイに滑り落ちた。リーグでも4位に後退。あまりにもショックが大きすぎる敗戦だった。【宮崎えり子】

 ▼呉昇桓が来日初の満塁本塁打を喫した。昨季から前登板まで満塁での投球は9度あったが、全打者を凡退させ4三振を奪っていた。1試合4失点も来日最多。今季では4月19日巨人戦で9回に1失点し追いつかれて以来、2度目の救援失敗。呉昇桓の被本塁打は来日7本目(今季2本目)だが、交流戦では初。

 ▼阪神のチーム年間最多セーブ投手が満塁本塁打を打たれたのは、97年9月11日広島戦で葛西稔が緒方孝市にサヨナラ弾を喫して以来、18年ぶり。