メッセンジャーゼロだ。交流戦から鮮やかに復活した阪神ランディ・メッセンジャー投手(33)がオリックス打線も圧倒。9回1死二、三塁のサヨナラピンチも力で封じ、連続無失点は自己最長の24回となった。20日ヤクルト戦から再開されるリーグ戦でも、当然のメッセンジャー大黒柱だ。酷評されたのはもう過去。1点でも取ればメッセンジャー白星だ。

 土俵際での精神力は横綱級だった。メッセンジャーは大粒の汗をかき、最後は自分の右腕を信じた。9回2死二、三塁。この日の136球目は、フォークでありながら143キロを計測した。7番ヘルマンのバットが回ると、体を1回転させて絶叫。執念の空振り三振だった。

 「いつも言うけれど、長いイニングを投げることを心がけている。今日はそれができたと思うよ」

 最後まで強気だった。9回は四球と左前打で無死一、二塁。5番T-岡田を一ゴロに打ち取ったが、すかさず盗塁を決められ絶体絶命の1死二、三塁を作られた。中西投手コーチがマウンドに歩み寄り、輪ができる。勝負か、満塁策か。この日2安打の6番小谷野を前にし、メッセンジャーにブレはなかった。

 「2本打たれているから、やり返すことしか頭になかった。とにかく失投しないように、より集中力を高めたよ」

 内角を突いた137キロで、打球は一塁ファウルゾーンへ上がった。一邪飛で2死二、三塁。そして、ヘルマンを斬った。9つの0を並べ、1歩1歩を踏みしめながら歓喜の三塁側ベンチに向かった。不調による2軍再調整から1軍復帰後は24回無失点。求めていた理想像に自分がダブる。

 日本での生活はもう6年目。日本の文化でメッセンジャーが大好きというのが「相撲」だ。1年目の10年3月に生観戦してから魅力に引き寄せられた。「大きな人間同士の真っ向勝負。それに細かい技があるだろ? 僕のスタイルもそう。逃げることは嫌いなんだ」。150キロ台の直球に120キロ台の緩いカーブが見事にマッチ。苦しい土俵際では踏ん張った。いつもテレビで見る横綱相撲がメッセンジャーの投球だった。

 「自分を抹消したのが間違いだったと証明したい。悔しさが(好投の)カギになっている」

 誰もが認める復活で、次回はリーグ再開初戦の、20日ヤクルト戦(甲子園)先発に内定。今のメッセンジャーに心のブレはない。