「平成のON」が大ブレーキだ。日本ハムがソフトバンクとの首位攻防第1ラウンドを落とした。3-3の9回、四球に失策がからみ、無死一、三塁のピンチで守護神増井が代打吉村に右中間へ痛打され、今季初のサヨナラ負けを喫した。頼みの4番中田、5番大谷はともに4打数無安打、計6三振。中軸が振るわず、交流戦でも勝率1位を争ったライバル相手に敗れ、首位から陥落した。

 ぶちギレた。サヨナラ負けで、天王山の第1ラウンドを終戦した。中田翔内野手(26)が、青筋を立ててほえた。激闘を終えた直後。傷心を逆なでするような、心ないヤジが飛んできた。発信源となったバックネット裏へ、鋭い視線を送った。しばらく該当する観客をにらみつけ、心を静めるとロッカー室へ。両耳にイヤホンを装着したまま、帰りのバスへと歩を進めた。「また明日だね」。多くを語らず、うっぷんは胸にしまい込んだ。グラウンドで見せたマグマを、必死に隠した。

 大ブレーキの「平成のON」が、重い黒星の象徴になった。同点の9回。先頭の田中が、守護神サファテの送球失策で出塁。無死二塁とした。まずは中田が空振り三振。最後の最後で爆発した怒りの導火線は、1-1からの3球目だった。外角高め155キロ。自信満々に見逃したが、判定はストライク。直後の4球目をスイングし、倒れた。三塁側ベンチへの帰り際、吉本球審へ「異議」を唱えたよう。近藤に巨体を押されて事なきを得たが、約10メートルの距離を隔て小競り合いした。

 続く大谷も1死二塁。同じように外角低めへの際どい154キロを堂々と見送ったが、見逃し三振。「判定は言ってもしょうがない。自信を持って見逃したけれど、もっとファウルにするとか、やりようがあった」。自身プロワーストの1試合4三振を喫したが、気丈に自分を責めた。この回、岡も含め3者三振で勝ち越しチャンスを逃し、その裏に悪夢。無死一塁から捕手近藤がバント処理し一塁へ悪送球してピンチを広げた。無死一、三塁。守護神・増井を投入したが、力尽きた。

 「平成のON」の計6三振、無安打が響き、13残塁の拙攻。5回の吉川を含め、2失策も痛恨の失点につながった。攻守に勝負どころで精彩を欠いた。通常は審判に紳士的な中田がエキサイトしたことが、充満したフラストレーションを証明していた。

 栗山監督 ストライクゾーンとか、いろいろあったんでしょ。それだけ選手が一生懸命やっている。それを勝たせることができない監督がヘボ。ヘボ監督にならないように、やっていきます。

 まとわりつくような後味の悪さを一掃する快勝、首位再奪取へ。今日20日の第2ラウンドへ向かう。【高山通史】

 ▼ソフトバンク戦で中田、大谷ともに4打数無安打。中田が2三振、大谷が自己ワーストの4三振で計6三振を喫した。大谷が野手でスタメン出場した試合でともに無安打だった試合は13年は7試合、14年は5試合、今季はこの日で4試合の計16試合あった。そのうち、日本ハムが勝ったのは15年4月8日西武戦(6-1)の1試合のみで、それ以外は敗れている。