日本ハム大谷翔平投手(20)が、今季2度目の完封で9勝目を挙げた。プロ入り後、パ・リーグで唯一勝ち星を挙げていなかったロッテを相手に9回3安打、11奪三振。チームの連敗を5で止め、自身は勝数、勝率、奪三振の3部門で再びリーグ単独トップに立った。ルーキーイヤーから続ける地方球場での連続無失点イニングも「31」に伸ばした。

 投球練習の手を止め、夜空に打ち上がる花火を見上げていた。5回終了時のインターバル。大谷には余裕と自信がみなぎっていた。「大量点をもらったし、最後までマウンドにいたいと思った。ストライクゾーンの中で勝負できたのでよかったです」。最後はデスパイネを三振に仕留め、3安打、11奪三振で127球の完封勝利。地方球場では、プロ入り以来31イニング連続無失点と無敵の強さだ。

 チームが5連敗で迎えたマウンド。初回、第1球に魂を込めた。「チームにいい風が吹けばいいなという気持ちで」。外角低めへ155キロ。わずかに外れてボールになったが、味方へ、そして相手への“決意表明”だった。

 最速159キロの直球は破壊力抜群。さらに「今季一番よかった」というスライダーが切れ味鋭く曲がった。低めには縦変化、コースを狙って横変化と2種類を使い分けた。3回岡田から5回の井口まで5者連続三振。「屋外球場はイレギュラーもあるので、なるべく三振でアウトを取りたいと思った」。強気な発言も、この日の出来なら納得だ。

 移動日だった22日には、旭川市内の有名カレー店に足を運んだ。かつては新庄剛志氏も訪れた、日本ハムの“パワースポット”。偶然にも、別々に入店した栗山監督、田中らも顔をそろえたという。「なかなか来る機会もないので、勝った姿を見せられてよかった」。今季初めて視察したヤンキースのスカウトも含め、スタンドに詰めかけた約2万人に、「大谷翔平」の持つポテンシャルを存分に見せつけた。

 目標のひとつでもあった「早くロッテに勝つ」もクリアした。パ・リーグ球団で唯一勝っていなかった相手からの白星で、“苦手”も消滅した。勝ち数、勝率、奪三振はリーグトップ。それでも「一気に4点取ってもらって、楽に投げられた」。打線への感謝を忘れなかった。

 5月の4連敗を止めたのも大谷。栗山監督は言った。「素晴らしかった。今日はありがとうと言いたい」。花火に代わって、勝利を祝う白いジェット風船が舞っていた。【本間翼】

 ▼大谷の完封勝利は4度目、2桁奪三振は11度目だが、2桁奪三振での完封は初めてだ。ロッテから初勝利を挙げ、これで巨人、ヤクルトを除く9球団から勝利。地方球場では登板全5試合、通算31イニング連続無失点となった。