確信を持って走り始めた。西武中村剛也内野手(31)が1回1死一、二塁からロッテ涌井の145キロ直球をとらえる。2試合連発となる24号逆転3ランが高い弧を描き左中間席に落ちた。「芯でとらえたし、いい抜け方でした」とスイングを振り返った。4回には右翼線適時二塁打、6回にも左中間フェンス直撃の適時二塁打を放ち3安打5打点で快勝を呼んだ。

 4月11日にも涌井から逆転2ランを放っているが、同じようなスイングで同じような弾道だった。それまで3試合12打席無安打の不振を脱する「一振り」だった。4月とはいえ今季唯一の3試合無安打で、打ちたくて力んでいたことを反省し、うまく力が抜けた一撃だった。

 浅村、森、メヒアと総称してフルスイングとひとくくりにされがちだが、中村は異質だ。始動から振り切りまでめいっぱい振っているのではない。田辺監督は「柔らかい? そうだね。彼はフルスイングすると力が入って空振りしちゃうんだ」と言う。力を抜いて始動し、インパクトの瞬間に最大のパワーをボールにぶつけ振り抜く。うまく抜ければ打球は飛んでいく。

 ただし、本塁打と三振は紙一重だ。ここ5試合で21打数6安打3ホーマーで10三振。中村は「そりゃ、したくないですよ。でも今年はさらに多いなと思っています」と、ちょっぴり渋い顔だ。今季通算99三振となったが、しないようにすれば本塁打も減るだろう。三振かホームラン。相手投手には脅威であり、おかわりクンのスリリングな魅力がここにある。【矢後洋一】