今季不敗の守護神に初めて土をつけた。日本ハム田中賢介内野手(34)が、楽天14回戦で執念の一打を放ち、勝利を呼び込んだ。2-2の同点で迎えた延長10回、1死から西川が楽天の松井裕から今季8試合目、打者35人目でチーム初安打。2死二塁となり、田中が左翼線へしぶとく落とす適時三塁打で、勝ち越した。ベテランの決勝打でチームは今季4度目の4連勝となった。

 微動だにしない。セットポジションに入って7秒、8秒…。長い間合いでも、田中はタイムを要求せずに、ジッと待った。「集中してました」。延長10回2死二塁。10・8秒…、ようやく楽天松井裕の足が上がる。直前と同じ、低めのチェンジアップ。バットを合わせ、左翼線に落とした。「食らいつくという感じでしたね。(打席で)全球種見られたのがよかった」。残像を頼りに、ボールの軌道にバットを振り下ろした。ベテランならではの、技ありの決勝打だった。

 “ノーヒットノーラン”の屈辱を味わっていた。松井裕とは今季8試合目の対戦。9回を3者連続三振に抑えられた時点で、通算9回1/3を無安打と、仮に1試合なら大記録を打ち立てられているところだった。「それは知らなかったです。打ってないなぁとは思いましたけど」。松井裕は抑え転向後初黒星。35人目の打者・西川の内野安打で突破口を開き、田中の一打で倍返しした。「抑え(投手)を打つのは難しい。点を取って勝てたのは今後につながる」と胸を張った。

 1死からでも犠打で送り、田中にかけた栗山監督は「打つならケンスケだと思った。ケンスケの技術と経験」と褒めたたえた。だが技術と経験を持ってしても、2年間のブランクは並大抵のものではなかった。メジャーの速球投手に対抗するため軽くしていたバットを、以前のものに戻した。パワーをつけるため増やしていた体重も落とした。これで元通り…とは、いかなかった。

 10年に打率3割3分5厘、渡米直前の12年も3割を打ったヒットメーカーが、2割半ばで低迷。打撃フォームを試行錯誤し、「左手を使いすぎるから」と、片手だけ素手にして打席に立ってみたが、逆に右腕に負荷がかかり、右肩亜脱臼につながった。踏んだり蹴ったり。患部はいまでも万全ではないが、それでも「それなりに頑張ってます」。ここ一番での存在感は、若手主体のチームに欠かせない。

 今季4度目の4連勝で、首位ソフトバンクとのゲーム差を再び3・5まで縮めた。「球宴前までに、ワンチャンスでひっくり返せるところまでいきたいです」。優勝、日本一を知る田中の力は、この先ますます必要になる。【本間翼】