二刀流に光明だ。日本ハム大谷翔平投手(21)が、ロッテ戦に5番DHで出場し、先制打でチームを勢いづけた。2回無死二塁から左越えの先制適時二塁打は、4月22日西武戦以来、野手出場20試合ぶりのV打。9回の内野ゴロで2打点目も挙げた。敗れた首位ソフトバンクと3・5ゲーム差。打率1割台の打者大谷だが、10日からの西武、ソフトバンクと、前半戦の最後に続く上位対決を前に、上昇のきっかけにしたい2打点だった。

 大谷が魅力満点の軌道を描いた。2回無死二塁。今季3戦3敗と苦手にするロッテ石川の出はなをくじいた。真ん中高めの初球140キロをフルスイング。一瞬だけ右翼へ視線を送り、打球を見失った。「振り遅れただけ」。視界に捉え直すと左翼線、フェンス際までライナーで飛んでいた。先制打を起点にこの回、一挙3点。4月22日西武戦以来、野手出場20試合ぶりの決勝打になった。

 トンネルの出口が少し見えた。この試合前まで打率1割8分6厘と開幕から低迷の一途をたどっていた。ただ「以前よりは良くなった」と言うように、5日楽天戦は代打で二塁内野安打。この日のV打は野手出場9試合、31打席ぶりの長打。栗山監督は「普通はどこに飛んだか分かる」と苦笑しつつ「自然とあそこ(左翼)に飛ぶのがアイツの打球。もう大丈夫だと思う」と一息ついた。

 最年少21歳の大谷を含め、この日の先発野手9人中7人が20代。そのうち外国人レアードを除き6人が生え抜き。試行錯誤で用兵する栗山監督は、試合前に儀式を行っていた。北海道在住の今、留守がちな都内の自宅近所を散策しイチョウの苗を収集。ベランダの植物用のポットに数本、大切に植えた。7月7日。「七夕らしいことをしよう」と、ひらめいた。

 「植物もそうなんだけれどさ。大切にすれば育つんだよ」。言葉は不要。環境をつくり、精魂込めて世話をする。心は届く。打撃不振の大谷を見守り、あえて助言を避けてきた。「オレにはダメな理由が分かっている。でも言わない」。凡退の連続でも出場機会を与え続けた。

 今カードが終われば球宴まで残り2カード。西武3連戦(札幌ドーム)ソフトバンク2連戦(帯広)と、上位を争う2強と激突する。前半戦ラストスパートへ。大谷の「二刀流」の本格開花が、生命線になる。【高山通史】

 ▼大谷が先制の二塁打。これが勝利打点となった。大谷の今季V打は4月1日ロッテ戦、同15日ロッテ戦、同22日西武戦に次いで4度目で、3度をロッテ戦でマーク。過去2年のV打は13年2度、14年4度で、昨季に並ぶシーズン自己最多となった。