1安打で勝った。日本ハムが西武岸を打ちあぐねたが、0-0で迎えた8回に岡のスクイズで決勝点をもぎ取った。チーム唯一の安打となった近藤の二塁打から、連続犠打で虎の子の1点。栗山英樹監督(54)の執念の采配が実り、首位ソフトバンクとのゲーム差を3・5に縮めた。1安打勝利は球団20年ぶり、「1安打+スクイズ」で1-0勝利は球団史上初の珍事だった。

 痛快に、投手戦にケリを付けた。難攻不落の相手エースを、ワンチャンスで崩した。8回1死三塁。栗山監督が下した決断に、岡が応えた。「イメージしていました」と、カウント1-1からバットを寝かせた。サインはスクイズ。外角高めに浮いてきた130キロのスライダーを、一塁線へ絶妙に転がした。打球を追った西武岸は、諦めるように一塁へ送球。泥臭く、決勝点をもぎ取った。

 唯一のチャンスを生かした。7回1死から中島が四球を選ぶまで、岸にパーフェクトに抑えられていた。制球、キレともに抜群の右腕に苦しむ不穏な空気を一掃したのは近藤だった。8回先頭、111キロのカーブを執念でとらえた。「抜けたと思わなかった」という打球は中堅フェンス直撃の二塁打。一気に流れを引き寄せた値千金の一打で、勝利への道筋が通った。

 選手の底力を信じていた。栗山監督は、じっと好機を待っていた。待望の初安打を合図にチームが一丸になった。「ダイカンが、すぐにこっち(ベンチ)を見たんだよね」。送りバントのサインを決めていた指揮官と陽岱鋼の思考がシンクロし、成功。今季バント失敗のケースが目立っていた岡にも迷いなくサインを送った。「岡も緊張したと思うけど、本当に良かった。選手たちの勝つという思いがつながったのが、うれしかった」と、目を細めた。

 1安打のみでの勝利は、95年4月18日オリックス戦(神戸)以来、20年ぶりという珍しい1勝となった。栗山監督は「これを伝えたかった。相手が、いくら良くても勝てる可能性はある結果的に勝つか負けるかしか、ないんだ」と、手応えを深めた。3位西武、首位ソフトバンクと戦う前半戦最後のヤマ場。重要視していた5試合の初戦を、鮮やかに制した。【木下大輔】

 ▼日本ハムの安打は近藤の二塁打だけ。1安打で勝利は14年5月10日DeNA以来でプロ野球36度目(他に0安打勝利が1度)。日本ハムでは95年4月18日オリックス戦以来5度目になる。また、1点はスクイズで、日本ハムの犠打による1-0勝利は62年10月6日阪急戦以来、53年ぶり。「1安打+スクイズ」で1-0勝利は球団史上初。