全パの西武森友哉捕手(19)が、自身初の球宴で実現した全セ藤浪との「大阪桐蔭バッテリー対決」を通天閣打法で魅せた。

 豪快なフォロースルーを終えた森のバットは天を指した。6回。19歳の小さな大砲が153キロの内角直球をアッパー軌道のフルスイングでかち上げた。強烈なバックスピンを帯びた打球が真上へ伸びる。約55メートルの東京ドームの天井にぶち当たり、一塁手ロペスがふらつきながら捕球した。漫画ドカベンの坂田三吉の「通天閣打法」を再現したような怪打に場内がどよめいた。

 ベンチで森が顔を覆った。「完全に捉えたと思った。やられました」。それでも通天閣打法について聞かれ「坂田のですよね。似ていましたか?」とニヤリと笑った。単なる凡退ではなく紙一重の攻防が生んだ超絶打球だ。経験者が認める。全セの阿部は「俺も何年か前にマウンド上のスピーカーに当てたことがある。スイングスピードが速いから、ボールにかなりのスピンが利いてああいう打球になる」と思い起こした。打ちも打ったり、投げも投げたり、だった。

 試合前、森は藤浪と約10分、左翼付近で談笑した。3月のオープン戦では157キロで左飛に打ち取られた。祭典での再戦へ後輩は「真っすぐで勝負してや~」と絡むと「それは分からんで」と先輩に返され「それないわ~」と、ちょっぴりすねてみせた。年齢は関係ない。甲子園で優勝旗を勝ち取ったバッテリーに心地よい空気が流れていた。

 藤浪は大阪桐蔭の先輩、中村、中田も打ち取り、3回完全投球でMVPを獲得。それでも森との対決に舌を巻いた。「(大阪桐蔭勢を)何とか紙一重で打ち取れて良かった。さすがに東京ドームで天井に当てられたことはない。抑えられてホッとしたというより、ビックリ。さすがにいいスイングをする」。森VS藤浪。名勝負数え歌が始まった。【広重竜太郎】

 ◆通天閣打法 漫画「ドカベン」で大阪・通天閣高校のエースで4番、左投げ左打ちの投手の坂田三吉が得意とした打法。ゴルフスイングのようなアッパースイングで、打球を高々と打ち上げる。高さ100メートルを超え、落下するにつれて変化を起こす。野手の落球を誘って、ランニングホームランを狙う。高さ103メートルの通天閣に例え命名された。ボールが落ちてくる前に本塁に生還し、相手の落球で得点することもある。