「ヤマダ劇場」で、ヤクルトが単独首位に躍り出た。山田哲人内野手(23)が、セ・リーグのキング独走となる22号アーチを放つなど、今季3度目の4安打で打線を引っ張った。1回に同点ソロ、6回無死一、二塁では勝ち越し二塁打と勝負強さを見せつけた。三塁打が出ればサイクル安打の大当たりでチームは今季初の6連勝。下馬評は低かった昨年の最下位球団だが、山田のバットで混セを抜け出しそうな気配だ。

 勢いに乗る山田のバットは、止まらなかった。リーグ独走となる22号を含む5打数4安打2打点の活躍。三塁打が出ればサイクル安打だったが「猛打賞ということすら忘れていました。明日も(5回終了時に)花火が上がるので応援に来て下さい」と、個人記録は意に介していなかった。

 1点を追う1回2死からリーグ独走の22号ソロを放った。フルカウントからの9球目。内角141キロ直球を左翼ポール際に運んだ。「インコースはノーマークではなかった。どこに来ても打ち返すつもりだった」。前夜に続く2戦連続弾で打線に火を付けた。

 山田の目標は優勝しかない。昨季は日本人の右打者でシーズン最多となる193安打の記録を樹立したが、チームは2年連続の最下位に低迷。個人的には充実した1年でもさびしさが残った。だからこそ今季は勝利への思いが強い。「優勝したいな… いや、しますよ。絶対!! 最下位はもう嫌ですもん。気持ち的に下がる。だから自分はチャンスで打たなきゃいけない。それを任せられている」。

 だからこそ今季は打撃だけではなく足にも重点を置く。3-3の5回無死から左前打で出塁すると、すかさず二盗を決めた。失策の間に三塁まで進み、一時勝ち越しのホームを踏んだ。「今年からは盗塁をしていこうと考えている」。17盗塁は、リーグトップのDeNA梶谷に1差。本塁打とタイトルをダブルで獲得すれば史上初の快挙となる。1発も足も…山田らしい活躍だった。

 後半戦に打率6割9厘の山田にけん引され、打線も活気づいている。14安打のこの日を含め、後半戦5試合のうち4度2ケタ安打をマークしている。真中監督は「周りのみんなが山田にかかるストレスを分散して、いい方向にいっている。また明日から気持ちを切り替えて戦っていきます」。山田も「まだ順位は関係ない」と冷静を貫く。目の前の試合を制する先に、夢の頂が見えてくる。【栗田尚樹】

 ▼山田が今季3度目の4安打。球宴後は23打数14安打、打率6割9厘の大当たりで、7月の成績が打率4割2分9厘、8本塁打、19打点。7月の山田は打撃3部門すべてリーグトップだ。昨年は7、8月に打率3割4分6厘、12本塁打、33打点と活躍した山田だが、今年も暑さに強いところを見せている。

 これで7月のヤクルトは10勝6敗となり、セ・リーグで今月勝ち越しているのはヤクルトだけ。7月に入って山田が打ちまくり、チームは単独首位に立った。