楽天が「田代魂」で連敗を6で止めた。2-2の8回2死一、三塁でウィリー・モー・ペーニャ内野手(33)が右中間を破る適時二塁打を放ち、勝ち越し。続く伊志嶺の2点適時打で試合を決めた。先月30日に打撃不振の責任を取り、田代富雄1軍打撃コーチ(61)が退団。同コーチから熱心に指導を受けていたペーニャは、恩返しのためにも結果を残したいと誓った。

 4番に戻った男は燃えていた。8回2死一、三塁。ペーニャは「みんながつないでくれた場面」と集中力を高めた。マウンドで相対するオリックス塚原とは2日続けての対戦。前日は変化球主体の攻めに三振を喫した。だからこそ、この日は直球に絞った。「積極的に狙っていった」と初球を見逃さなかった。145キロ、外角高めの直球を振りぬいた。角度のある打球は右中間を破り、ワンバウンドで右翼フェンスに到達。二塁塁上でお決まりのポーズを決めて喜んだ。

 楽天を去った田代コーチへの惜別打だった。先月30日に退団した同コーチは、アーリーワークで熱心に指導を行ってくれた。打撃のポイントの位置やフォームを毎日見つめ、修正点があるとアドバイスを受けた。「田代さんが手伝ってくれたから、ここまで来られた。田代さんのおかげだし、これからも教えを守っていきたい」と振り返った。

 田代コーチが去った影響は打順にも表れた。球団とフロントが中心となって組まれていたオーダーも、打撃不振の一因は変えすぎるためと批判が集まった。そのためこの日から現場に一任。監督、コーチが状態を見極めて起用した。外野守備につかず、3番DHで出場した松井稼は3安打と好機をつくるなど、結果は出た。大久保監督は「体がいっぱいいっぱいなのに、思いをくんでつないでくれた」と目を細めた。

 ペーニャは言う。「田代さんがいなくて寂しい。だからこそ、どんどん打って恩返しをしていきたい。打つことが恩返しになるのだから」と。人望があり、13年日本一の功労者は去った。しかし、シーズンは続いていく。連敗は6で止まり、3位とのゲーム差は4に縮まった。新体制で勝利を積み上げることが何よりも重要だ。【島根純】