阪神が球団OBの金本知憲氏(47)に来季新監督就任を正式要請し、交渉していたことが2日、分かった。受諾には至らず、慎重な姿勢を示したという。ただ近い関係者には前向きな姿勢も示しており、クライマックスシリーズ(CS)を含めたチーム全日程終了後の金本監督誕生へ向けて、細部を詰めるための熟考期間に入ったようだ。

 関係者によれば、前日1日、南球団社長が金本氏と極秘会談し、監督就任の要請と交渉を行ったという。その場では条件面などの提示もあったが、金本氏は即答をせずに持ち帰ったという。ただ、決して悲観的な状況ではなさそうだ。

 坂井オーナー、南球団社長ともに次期監督について沈黙を貫いているが、金本氏に近い関係者によれば周囲から注目度の高い人気球団の監督、さらに現在のチーム状況などを考慮すれば慎重になる部分はあるが、前向きな姿勢も示しているという。指導者経験がない監督1年目ということもあり、バックアップ体制を含めた条件面、コーチングスタッフをどうするかなど細部にこだわることは予想される。今後は球団側の提示と自らの希望をすり合わせながら熟考。解説者としての仕事の合間を縫って再度交渉を行うことになりそうだ。

 また、周囲への配慮を欠かさない金本氏は、シーズンを戦っているチームのことを気にしているという情報もあり、CSを含めたチーム全日程終了後の返答へ向けた“熟考期間”だと言うこともできる。時期にもよるが、次回交渉で受諾となることも考えられるという。

 球団関係者によれば、金本氏は現役時代から細部にこだわり、結果を出してきただけに、チームづくりに置いても、ゼロから自分の色を反映することが当然予想されるという。03年、05年のリーグ優勝時、ともに戦った矢野燿大氏、下柳剛氏、赤星憲広氏、また、広島時代に指導を受けた高代延博現内野守備走塁コーチ、広島時代から親交の深い西山秀二氏らがコーチングスタッフとして浮上する可能性も十分にある。

 真弓監督、和田監督は基本的に就任時の戦力、方針を踏襲しながら戦ってきたが、金本氏は03年にFAで移籍した時から猛虎を改革した男として知られている。だからこそ、抜本的な改革が必要とされるこのタイミングで白羽の矢が立った。こだわりを持ち、自らの考える野球を実現しやすい環境をつくるための交渉が予想される。現体制の戦いがすべて終わったタイミングでの「金本監督誕生」へ向けて、慎重な熟考期間に入ったようだ。

 ◆金本知憲(かねもと・ともあき)1968年(昭43)4月3日生まれ。広島県出身。広陵-東北福祉大から91年ドラフト4位で広島に入団。03年から12年まで阪神。通算2578試合出場、2539安打、打率2割8分5厘、476本塁打、1521打点。1766連続試合出場は衣笠氏に次ぐ歴代2位。1492試合連続フルイニング出場は世界記録。04年に打点王。ベストナイン7度。現役時は180センチ、88キロ、右投げ左打ち。

<阪神監督問題経過>

 ◆9月23日 中村勝広GMの訃報をナインは知らされないまま巨人にサヨナラ負け。自力2位が消え、和田監督は退任危機。

 ◆24日 坂井オーナーと南球団社長が緊急会談。和田監督の進退は順位確定まで見守る方針を確認。

 ◆25日 広島に3-0で勝利するも、和田監督の退任が確実に。後任は球団OBを中心に選定される方針も判明。

 ◆26日 広島入りした南社長と和田監督が直接会談。

 ◆27日 広島に連敗し優勝が完全消滅。和田監督は「全ての責任は私にある」。

 ◆28日 来季新監督をOBの金本知憲氏に要請するよう最終調整に入った。

 ◆30日 電鉄本社での坂井オーナー、南社長会談で金本氏に正式要請することを決定。