3年目の初夢は、日本一-。楽天松井裕樹投手(20)が29日、仙台市内の球団事務所で契約更改に臨み、4000万円増の年俸6500万円(推定)でサインした。来季の目標に「日本一」を掲げ、守護神「続投」なら40セーブを目指すと決意した。高卒3年目シーズンの年俸では09年田中(現ヤンキース)の7500万円に迫り、95年の巨人松井の6200万円を超えた。来季こそ、日本一で大台の1億円を突破する。

 史上初の20歳シーズンで30セーブに到達した左腕で、迷わず「日本一」と書いた。入団から2年連続で最下位を味わった松井裕は、濃紺のスーツ姿で来季をにらんだ。「目標は日本一です。まだ先発か抑えかは聞いていませんが、歴代の優勝チームのクローザーは38~40セーブを挙げていた。もし抑えなら、日本一のためにその数字を目指したい」。現時点でチームNO・1のアップ額にも浮かれた様子はなし。新たなハードルを課し、自らを引き締めた。

 今季は新守護神としてチーム2位の63試合に登板し、防御率0・87と絶大な安定感を誇った。当初候補のミコライオが2月に負傷離脱し、急きょ託された大役を全うした。「63試合の全てに大変さがあった。失敗もあったので、成績に納得はしていません」。自己評価は厳しいが、チームを背負いマウンドに上がる姿に、セットアッパーの青山は心地よい懐かしさを覚えた。「強い責任感。(田中)将大に似た雰囲気ですよね。何とか松井につなぐんだ、という気持ちになった」。確実にチームの中心だった。

 先発か、守護神か。来季の起用法は12月上旬にも決定する見込みだが、ポジションで目標が変わるわけではない。「いずれにせよ、オフのテーマは体づくりなので。今年は軸足の股関節に重点を置いた。今度は踏み出し足の安定を目指して下半身を強化します」と、既にメニューを練り上げている。来年1月上旬には、再びヤンキース田中らと合同自主トレに臨む。「今度は自分からお願いしました。試したいフォームや練習など、うまくいかない時にアドバイスをもらえたら」。成人式は欠席する予定。今はそれ以上に重要なものがある。

 苦い経験もしたプレミア12では、ソフトバンク主力選手の一挙手一投足が日本一への教材になった。「例えば松田さんとか、ベンチでの雰囲気づくりがすごかった。自分も、投げない時にも何かできるのかなって思いました」。増額分の使い道を聞かれ「高3の弟が、そろそろ車の教習所に通うと思うので、その代金に」と笑った。周囲のため、チームのために。頂点を目指し、来季も力いっぱい左腕を振る。【松本岳志】

 ◆高卒3年目の年俸 松坂(西武)と大谷(日本ハム)の1億円が最高で、松井裕の6500万円は6位になる。2年目に27セーブを挙げた平井(オリックス)はチームも優勝したため、2年目の660万円から809%増の6000万円となった。3年目では1億円に到達しなかったダルビッシュ(日本ハム)と田中(楽天)だが、2人は3年目に15勝して翌年大幅増。ダルビッシュは3年目の7200万円から2億円、田中は7500万円から1億8000万円となり、4年目は松坂の1億4000万円を逆転した。