“説教”にピリッ! 阪神金本知憲監督(47)が22日、宜野座キャンプのバント練習で投手陣を引き締めた。走者を置いた状況で送りバント失敗が続出。一塁へのスタートを機敏に行わなかったシーンもあり、緊張感を求めた。担当の平田チーフ兼守備走塁コーチが「辞表」を持ってきたとジョークもかましたが、事細かく1点をもぎとる執念を、投手にも植えつける。

 安芸から伝わった朗報よりも目の前の1点だ。この日は先発陣がバットを持って打席へ。無死一塁、無死一、二塁で送りバントする練習を繰り返した。岩田が何度もファウルし、ミスする。岩貞や秋山も失敗…。テンポよく決められない姿を見届けた金本監督は「今日は高山よりバントでしょう。まだまだ失敗が多い」と、バッサリと指摘した。

 練習後、4時間ほどたっていた。ニヤリと笑って振り返る。「平田チーフコーチが辞表を持ってきたみたい。責任を取ってと。止めたけどね、俺は。何か書いているなと思って、封筒に入れて持ってきた。すぐ慰めたんやけどな」。金本監督ならではのブラックジョークで周囲の爆笑を誘ったが、目は真剣だった。練習中は送りバントへの心構え、走塁への意識を先発陣に厳しく説いていた。

 「室内で普段やっているときの意識をどれだけ持ってできるか。バントの時間だからバントする、というようじゃ甘いね。室内とかメーンじゃないとき、バント練習でピリッとして、緊張感を持って自分の形を覚えるコツをつかむまで、真剣にやってほしい。自分に返ってくるから、投手は」

 金本監督は球を転がすだけでなく、走塁にも力点を置く。相手のフィールディング失敗も想定して、気を緩めず走る大切さを説く。

 「今日も言いました。もうちょっと、徹底して欲しい。いいバントをして終わりじゃない。ワンジャッグルしたらセーフになる。投手が握り損ねれば、7、8割で走ればセーフになる」

 ただの練習ではない。勝敗に直結し、ペナントレースを左右する1点になるかもしれないのだ。藤川は期せずして、指揮官の思惑通りに動いていた。開始前、周囲には「俺、下手やし、ケガしてもアカンから集中してやってや」と言ったという。1球ずつ丁寧に転がし、安定感は抜群だった。

 指揮官は「両手でバントして1点入るか、失敗してゲッツー食らうか。コツをね。しっかりコツをつかんで練習すればうまくなる」と続ける。現役時代は豪快な打撃が売りで、犠打はわずか4個。だが、目指すのはそつなく1点をもぎ取る野球だ。投手も地道に転がし、渋く、手堅く1点を奪いにいく。【酒井俊作】

 ◆昨季の阪神投手陣による送りバント 勝負どころで犠打を決められず、苦戦につながるケースがあった。4月5日巨人戦では、藤浪が2度失敗。3回無死一塁ではバントファウル3本、6回無死一塁では投前に転がしたが二塁封殺。好機を広げられず完封負けの遠因となった。首位ヤクルトを1ゲーム差で追う9月18日DeNA戦4回無死一、二塁では、メッセンジャーがスリーバント失敗で逸機し、試合は2-3の惜敗。投手陣による昨季の31犠打はセ・リーグ最多だった。