野球賭博に関与していたことが明らかになった巨人高木京介投手（２６）が９日、東京・大手町の球団事務所で謝罪会見を開き、謝罪の言葉と発覚に至るまでの恐怖心を口にした。昨年１０月に野球賭博への関与が発覚した３投手は会見を開かなかったが、高木京が望んで実現した。賭博行為常習者とされる笠原将生元投手（２５）の知人の飲食店経営者について「最初はいい人だと思ったが、怖い人だと実感した」などと語った。球団は、今日１０日に高木京をコミッショナーに告発すると発表した。

　高木京は硬い表情のまま、会見場の入り口で深々と一礼した。冒頭で「関係者の皆様を裏切ってしまい、本当に申し訳ありませんでした」と謝罪し、今回の発覚に至る経緯や後悔の念を口にした。「ファンの皆様におわびをしたい」と自ら望んで実現した謝罪会見は、約１３分間に及んだ。

　昨年１０月、当時巨人に在籍していた福田聡志（３２）笠原将生、松本竜也（２２）の３投手が野球賭博に関与したことが発覚した。自身のことも明らかになるのではと不安になり「ビクビクしていました」。ただ、笠原元投手の知人で日本野球機構（ＮＰＢ）が野球賭博常習者と認定した飲食店経営者から「君は大丈夫」などと言われた。最初は高木京の自宅を訪れ、車の中で話したという。以後も頻繁に連絡を受け「安心してしまいました。いい人だと思いこんでしまいました」。

　それでも不安を消せないでいると、新宿のある店で会って話すことになった。「ＮＰＢにも警察の偉い人にも通じている」と紹介された相手の友人も一緒だったという。経営者が笠原元投手ともテレビ電話をし「笠原に名前を貸したことにしよう」と口裏を合わせた。高木京は「これで大丈夫だと思った」。週刊誌の取材を受けた球団から今月に再調査を受けた際も「口裏合わせ、名義貸しという、うその供述をしてしまいました」。

　ただ、「いい人」という経営者に対する認識は次第に変わった。２月の宮崎キャンプでＮＰＢによる講習会が行われ、野球賭博常習者との交際も野球協約に違反すると知った。そのため笠原元投手を通じ関係を断とうとしたが、連絡が続いた。

　「精神的にも参って、これ以上、うそを突き通すのは限界がある」と考え、妻と両親に相談し、発表前日の７日夜に球団に事実を認める決断をした。その夜も経営者から「真実は言わなくていい」などという連絡がきたが、高木京は「もう球団に迷惑をかけるわけにはいかない」と事実を認めた。今でも経営者からの連絡はやまないという。

　「最初はいい人と思ったが、今はすごく怖いというか恐ろしいと思います」

　説明を終え、もう１度頭を下げた。顔を上げた高木京の目からは涙があふれていた。今後について問われると「まだ分からないですが、まずは自分がやってしまったことを深く反省して、しっかり受け止めて前に進んでいきたいと思います」と声を絞り出した。

　◆高木京介（たかぎ・きょうすけ）１９８９年（平元）９月５日生まれ。石川県出身。星稜から国学院大を経て１１年ドラフト４位で巨人入団。いきなり新人で開幕１軍入りし、１年目は３４試合に登板して２勝１セーブ。日本ハムと対戦した日本シリーズ第６戦で勝利投手となり、日本一を決めた試合で新人の勝利投手は史上３人目だった。プロ通算は１３９試合で６勝０敗１セーブ、防御率３・０３。昨年５月１４日広島戦で桟原（阪神）を抜くデビューから１１７試合連続黒星なしのプロ野球新記録をマーク。不敗記録を１３９試合まで伸ばしている。１８３センチ、８６キロ。左投げ左打ち。今季推定年俸２７７０万円。

　◆高木京の賭博問題の経緯　２月２９日、巨人は週刊文春の取材により高木京が昨年発覚した野球賭博に関与していた疑いがあることを知り調査を開始した。複数回にわたる事情聴取に対し、高木京は昨年１１月に無期失格処分になった笠原元投手に「名前を貸していただけ」と否定した。しかし、８日になって笠原や野球賭博常習者のＢから持ち掛けられた作り話だったと告白し、野球賭博を認めた。

　球団が公表した供述内容によれば、高木京は１４年４月下旬から５月上旬まで、笠原が賭けた試合に乗っかる形で１試合に１０万～１５万円ずつ計８～９試合を対象に賭けた。総額５０万～６０万円負けたため、それ以降はやめたという。昨年の問題発覚後、Ｂと口裏合わせのためのミーティングを行ったことも判明した。

　球団はその日のうちに緊急会見を開き、高木京をコミッショナーに告発すると発表。この問題の責任を取り、渡辺球団最高顧問、白石オーナー、桃井球団会長が辞任することも明らかにした。