12年目の春がやって来る!? 阪神岡崎太一捕手(32)がオープン戦のDeNA戦(甲子園)で二塁打2本を放ち、開幕スタメンマスクの最有力候補に浮上した。金本知憲監督(47)も「打撃がよければレギュラーに一番近い」と高く評価した。オープン戦打率は4割5分5厘。12年の1軍19試合出場が最多の控え捕手だったが、矢野燿大作戦兼バッテリーコーチ(47)も守備でNO・1評価を下しており、レギュラー奪取は夢物語ではない。

 野球人生をかけたひと振りはライナーになって左翼線をはずむ。1点リードの4回1死一塁。サインはエンドラン。岡崎への内寄りに飛び込んできたのはスライダー。これをはたくように捉え、ライナーで左翼線をはずむと、一塁走者高山が長駆生還した。思いを込めた打球はひと伸びする。金本監督はうなずく。

 「構えもだいぶ変わったね。かっこいい構えになっている。去年の秋からかなり入れ込んで教えてきたけど、だんだんフォームも変わってきて、雰囲気が出てきた」

 2回も三嶋の内角直球に詰まりながら左翼線に運んでいた。3月のオープン戦の先発マスクは梅野、小宮山、岡崎、小宮山、梅野…。そして、この日は再び岡崎だった。しかも直前の2試合で小宮山も梅野も快打を連発。正捕手争いは激化する一方だ。1歩も譲るわけにいかなかった。

 金本阪神の開幕マスクを誰がかぶるのか。指揮官は捕手岡崎の評価を問われて注目発言。「ディフェンス面では、矢野コーチが一番評価している。彼が打ったら打撃さえ良くなったら、そういうレギュラーに一番近いとは思うけどね。打てばね」。昨季は1軍でわずか1試合出場。2軍でも30試合出場にとどまっていた。過去11年間で1軍通算6安打。戦力外もちらつく厳しい立場に追い込まれていたが、この日もマルチ安打でオープン戦打率は4割5分5厘に上昇。一躍、正捕手の最右翼に浮上した。

 この日、高打率を問われた岡崎は「そこは気にしてません。投手との間合いを意識していきたい」。捕手目線は忘れていない。もうダークホースと言わせない。堂々と扇の要を奪いにいく。【酒井俊作】

 ◆岡崎太一(おかざき・たいち)1983年(昭58)6月20日、奈良県生まれ。智弁学園-松下電器から04年自由枠で阪神入団。矢野(現阪神作戦兼バッテリーコーチ)の後継者と期待されたが伸び悩み。4年目の08年には背番号が27から57へ。初スタメンマスクは09年4月7日広島戦だった。昨季は3年ぶりに1軍出場したが、1試合に終わった。180センチ、83キロ。右投げ右打ち。

 ◆阪神の正捕手争い キャンプ前から昨季、55試合でマスクをかぶった24歳の梅野が筆頭候補とみられたが、実戦の打撃が本調子ではなく、その間に守備力に秀でた小宮山や岡崎が存在感を強めた。2軍キャンプスタートの38歳鶴岡は昨年、70試合、守備に就いており、安定感抜群。金本監督はこの日も「直前まで分からない」と話しており、開幕まで残り2週間少々のバトルに注目だ。