【穂積乃愛〈上〉】「先生になりたすぎて」太田由希奈への憧れ、重なる不運も滑り続け

日刊スポーツ・プレミアムでは、毎週月曜日にフィギュアスケーターのルーツや支える人の信念に迫る「氷現者」をお届けしています。シリーズ第73弾は穂積乃愛(21=早大)が登場します。

小学1年でスケートを始め、16年全日本ノービス選手権Bクラスで3位。22年全日本ジュニア選手権は9位に入りました。今季からは田邊拓也(東洋大)とアイスダンスにも挑み、女子シングルでは初の全日本選手権出場を決めました。

全2回の上編では、太田由希奈への憧れ、相次ぐケガ、全日本にあと一歩と迫った高校時代から、早大進学までをたどります。(敬称略)

フィギュア

◆穂積乃愛(ほづみ・のあ)2005年(平17)10月27日生まれ。駒場学園高を経て、24年に早大人間科学部通信教育課程へ進学。小学1年でスケートに触れ、神宮を拠点に太田由希奈、樋口豊に師事。高校進学時から岡島功治に学ぶ。16年全日本ノービス選手権Bクラス3位。22年東京夏季競技大会ジュニア女子優勝、全日本ジュニア選手権9位。26年3月には高橋大輔がプロデュースするアイスショー「滑走屋」に出演。今季から田邊拓也とアイスダンスに取り組む。

ポーズを取って写真に納まる穂積(撮影・勝部晃多)

ポーズを取って写真に納まる穂積(撮影・勝部晃多)

本当のスタート

2026年10月18日、東京・田中貴金属アイスアリーナで行われた東日本学生選手権(東インカレ)。リンクサイドで準備運動をしていた穂積は、取材の依頼に目を輝かせた。

「出ることが憧れだったんです。アップ中からずっとわくわくしていました(笑い)」

今からちょうど4年前、日刊スポーツ・プレミアムの誕生とともに始まった「氷現者」。フィギュアスケーターのルーツや支える人の思いに迫る人物連載は、穂積で73回目を迎えた。多くの選手や指導者たちに続き、自分も名を連ねられる。そのことがうれしいのだと、屈託のない笑みを浮かべた。

今季は田邊拓也とカップルを組み、アイスダンスにも挑戦。女子シングルでは、初の全日本選手権出場を目指している。スケート人生15年目に、新しい日々が始まっていた。

「今が、本当のスタートだと思っているんです」

後日の取材では、そんな言葉を口にした。自分の思いを書き出したメモも用意していた。

今の自分のことも、ここに至るまでのことも、知ってもらいたいことがたくさんあった。

東京選手権 シニア女子フリーで演技する穂積乃愛=2026年10月3日

東京選手権 シニア女子フリーで演技する穂積乃愛=2026年10月3日

ジュニアアイスダンスRD 笑顔中、笑顔を見せる穂積乃愛(手前)と田邊拓也=2026年9月12日

ジュニアアイスダンスRD 笑顔中、笑顔を見せる穂積乃愛(手前)と田邊拓也=2026年9月12日

始まりは、2歳のころだった。テレビに映る浅田真央に夢中になった。

外で遊ぶのが大好きで、家の中ではじっとしていられなかった。そんな子がスケートの中継が始まると、黙って座りこむ。その姿に、両親も祖父母も驚いた。

「くるくる回ったり、衣装もかわいいし、すごいって思ったのがきっかけです」

自分も滑ってみたい。ただ、両親は仕事が忙しく、教室にも空きがなかった。

競技人生が動き出したのは、小学1年のころ。祖母と明治神宮外苑アイススケート場へ遊びに行くと、たまたま教室に入れると分かった。祖母がその場で申し込み、母は帰宅後に「入れたの?」と驚いた。

氷の上は、ただ楽しかった。中でも行きたい場所があった。

「とにかく真ん中に行きたかったんです」

コーンで分けられた内側では、選手たちがジャンプやスピンを練習していた。テレビの中の選手たちは、リンクの中央で演技を始め、中央で終える。祖母の手を取り、そちらへぐいぐいと引っ張った。

コバトンカップ ノービスAクラスで優勝した穂積(本人提供)

コバトンカップ ノービスAクラスで優勝した穂積(本人提供)

先生になりたい 

教室と個人レッスンを経て、小学2年の終わりから3年に上がるころに太田(現・松永)由希奈に習い始めた。まず母が他の子を教える所作にひかれ、自身も指導を受けたいと考えた。

「私も『かわいい先生に見てもらいたい!』みたいな感じでした(笑い)」

チームに移ると、その人はすぐに目標になった。理想だった。

「どこを切り取ってもきれいで、美しい選手というイメージなので、そこにすごく憧れていました」

太田と樋口豊に、指先、足先まで美しく見せることを教わった。練習では、ジャンプよりもスケーティングの時間の方が長かったと思うほど、繰り返し滑った。地味な練習も、少しでも先生に近づけると思えば、苦にならなかった。

全日本ノービス選手権Bクラスで3位となり、太田コーチ(左)と写真に納まる穂積(本人提供)

全日本ノービス選手権Bクラスで3位となり、太田コーチ(左)と写真に納まる穂積(本人提供)

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スポーツ

勝部晃多Kota Katsube

Shimane

島根県松江市生まれ。2021年4月入社。高校野球の神奈川担当などを経て、同年10月からスポーツ部に配属。バトル班として新日本プロレスやRIZINなどを担当し、故アントニオ猪木さんへの単独インタビューや武藤敬司氏の引退試合、那須川天心―武尊などを取材した。 23年2月から五輪班に移り、夏季競技はバレーボールを中心に担当。同年秋のW杯や24年夏のVNLなど。冬季競技はフィギュアスケートをメインに務め、全日本選手権は2年連続で取材中。X(旧ツイッター)のアカウントは「@kotakatsube」。