パ・リーグ首位を恐怖のどん底に突き落とす…。まさにデスバットだ!? オリックスのドラフト1位吉田正尚外野手(23)が2本塁打を含む3安打6打点と大暴れし、日本ハムを首位から陥落させた。吉田正は8、9日のソフトバンク戦でも同点弾、決勝弾と2試合連発。9日に首位だったソフトバンクを2位に陥落させた。最下位チームで堂々と3番を務めるルーキー大砲が「首位いじめ」弾を量産し、2強を苦しめている。

 今度は札幌で「デスノート」ならぬ「デスアーチ」が飛び出した。吉田正は1回1死一塁で、147キロ直球をフルスイング。流し打って左翼席に飛び込んだ。先制8号2ラン。日本ハムを首位から引きずり下ろす決勝弾となった。

 「しっかりと捉えることができた。狙ったというわけじゃなく、強く振ったら逆方向に飛んだ」

 6回は適時打で有原をKOに追い込み、7回は斎藤のフォークを右中間席中段へとどめの9号3ランだ。

 同点弾と決勝弾を放った8、9日の大阪でのソフトバンク戦に続き、強烈な上位いじめ。「そういう意識はないですけど…。まだ自分のデータもないと思うし、相手に嫌がられる存在になりたい。必死です」。9本中5本を上位2チームから放っている。

 開幕スタメンも腰痛で4月24日に離脱し、8月12日の復帰後は28試合で9本塁打。驚異的なペースで量産している。要因には失敗の大切さを挙げる。

 「アマと違ってプロでは次の試合がすぐに来る。ダメだった自分の感覚を大事にして、次に生かしている」。成功体験を自信にする通常のルーキーとは正反対の考え。試合後は映像で凡打の打席も確認している。前日13日は大谷に無安打。「ここ2試合タコってたんで良かった」と好結果につながったことを喜んだ。

 中1で右肘手術の経験があるが、他には大きな故障がなかった。だからプロ1年目の4カ月離脱は悔しい。「最後まで1軍で出続けることが目標」と控えめだが、今や打線の中軸となった。4番T-岡田が「自分の本数(19本)を抜かれないように頑張る」と先輩を刺激する存在に成長した。

 青学大では大学日本代表の4番。現阪神高山、現楽天茂木の新人王候補を従え、クリーンアップの真ん中に座った。そんな強打者が次世代のスター候補生に躍り出た。今日15日までの日本ハム3連戦が終われば、1日置いて17日からソフトバンク3連戦。「大学の時から1本出ればどんどん出るタイプなんで」。CS進出が消えた最下位ながら、2強にとって脅威の存在となってきた。【大池和幸】

 ◆吉田正尚(よしだ・まさたか)1993年(平5)7月15日生まれ。福井市出身。敦賀気比高(福井)では1年春からレギュラーで、同夏から4番。甲子園は1年夏が2回戦敗退、2年春に8強。高校通算52本塁打。青学大では1年春から出場。4年秋は東都大学リーグ2部で3冠王。大学通算17本塁打。15年ドラフト1位でオリックス入団。173センチ、80キロ。右投げ左打ち。

 ◆大学ジャパン4番 15年8月26日のU18W杯壮行試合に大学日本代表の4番左翼で出場。オコエ、平沢、清宮らの前で、貫禄の2打席連続本塁打。視察のヤクルト小川SDは「アマチュアではバッティングはNO・1」と評価した。

 ◆イチローに興奮 1月23日の新人合同自主トレにイチローが現れた。吉田は「足は大丈夫かと声をかけてもらった。スイングと飛距離がすごい」と驚いていた。

 ◆驚異の柵越え率6割! 新人合同自主トレ初の屋外ロングティー打撃で、50スイング中、30本が柵越え。パワーを見せつけ「大学と違ってプロのボールはきれいでよく飛びますから。外で打つのは音も響くし、気持ちいい」。バットは本番用より重い950グラムの練習用だった。

 ◆プロ1号 8月18日、日本ハム増井の149キロをフルスイングで右翼席ぎりぎりに届けた。「詰まりましたね。速い真っすぐに反応できたのは良かった。自信になる」。開幕スタメンも4月下旬に腰痛で離脱。8月12日に復帰後6試合目、通算101打席目で出た1発だった。

 ▼吉田正が1回に先制2ラン、7回にダメ押し3ラン。8月27日楽天戦に次いで、今季2度目の1試合2本塁打。新人がマルチ(複数)本塁打を2度以上は03年村田(横浜=4度)以来で、パ・リーグでは90年石井(近鉄=2度)以来26年ぶり。これで9月に入って5本目。ルーキーの月間5発は10年7月長野(巨人)以来で、パでは94年8月小久保(ダイエー)以来。新人の月間最多本塁打は03年9月村田の10本。吉田正は何本打てるか。

 ▼吉田正は6回に適時打を放っており、1試合6打点。新人の1試合6打点以上は8月25日高山(阪神)に次いで今季2人目。パでは06年3月29日炭谷(西武)以来。