主砲のバットが打線に着火し、大勝へと導いた。日本ハムが2-2で迎えた3回、先頭の4番中田翔内野手(27)から犠打、四球を挟んでの7連打で、一気に大量6点を勝ち越し。4回以降も勢いは止まらず、18安打で今季最多14点を奪い、連敗を2でストップした。ソフトバンクがオリックスに勝ったため首位奪還はならなかったが、0・5ゲーム差で背中を追いかける。

 大観衆が、栄光のメロディーを響かせた。2-2の3回。先頭中田の打席で、ファンが一斉に跳びはね、叫んだ。偉大なOBの代名詞だった「稲葉ジャンプ」。球団史上初の日本一に輝いた、06年へとタイムスリップした。当時、中軸を担い日本一に貢献した稲葉篤紀氏(44=現球団スポーツ・コミュニティ・オフィサー)への期待と重ねるように、「中田ジャンプ」が奏でられた。

 中田 びっくりした。うれしかったですね。応援歌は個人的にはうれしかった。(稲葉氏は)ずっと僕たちの手本のような人。違った意味で気合が入った。

 強烈な後押しを受け、猛攻の口火を切った。3回、ロッテ関谷の高めの直球143キロをはじき返した。続く田中賢、岡の連打で無死満塁と攻め立てる。「流れを切らないように。見逃せばボール球だったけど、うまく上からバットをもっていけたよ」というレアードが、左前に勝ち越し2点適時打を放った。勢いは止まらず、なお2死満塁から近藤が走者一掃の左中間越え3点二塁打、大谷が右翼線に適時二塁打で続き、打者一巡で一挙6得点。勝利を引き寄せる、ビッグイニングを演出した。

 初回2点をリードされたその裏、流れを引き戻したのも中田だった。2死一塁からチーム初安打となる中前打。その後、2死満塁と好機が広がり、岡が投手強襲の適時打を放った。7回にダメ押しの左中間越え2点二塁打を放つなど、3安打2打点の主砲の活躍もあり、今季最多14得点での大勝。ソフトバンクも勝ったため、ゲーム差は0・5のまま、肉薄の優勝争いが続く。栗山監督は「相手のことは関係ない。とにかく勝つことに必死になってやるだけ」と選手を信じ、ただ前だけを見つめた。10年ぶりの歓喜のフィナーレへ-。一丸となるチームの中心に、中田が座っている。【田中彩友美】