主役は最後までマウンドを譲らなかった。日本ハム大谷翔平投手(22)が、優勝決定の瞬間、センターを振り向き、両手を突き上げガッツポーズだ。4年目で初めて味わう歓喜の輪に、胴上げ投手として加わった。

 9回を投げ抜いた。5回1死までは完全投球。続く西武森に右前安打を許した後、右腕にムチが入った。うなりを上げる剛速球にスライダー、フォークがさえ渡った。5者連続を含む今季最多の15奪三振、1安打完封のメモリアル星となった。

 「ピッチングで1回も褒めたことがないけど、最高でした」。優勝監督インタビューで栗山監督も称賛の声を惜しまなかった。

 今シーズン、投打二刀流の取り組みが結実した。開幕からシーズン序盤は、マウンドで勝ち運に恵まれなかった。8回1失点で黒星がつくなど、開幕から5試合連続で勝ち投手になれなかった。今季初白星は5月2日ロッテ戦と出遅れた。「僕的には長く感じました。難しいなと」。安堵(あんど)の表情を見せた試合を経て、5月22日楽天戦から7試合連続勝利。エースとして軌道に乗ったと思われたが、落とし穴が待っていた。

 7月10日ロッテ戦で、7回途中に右手中指のマメが破れて降板。投手としてファン投票で選出された球宴も野手出場を余儀なくされた。体調不良による調整の狂いもあり、9月7日ロッテ戦で先発復帰するまで、約2カ月を要した。

 それでも、投球がダメなら打撃がある。二刀流の強みを最大限に生かした。

 登板できない時期は、指名打者で出場を続けた。3番を任される試合も多かった。打率は3割超え、本塁打も「20本は打ちたいですね」とオフに話していた数字をクリアした。投打で年間を通じて、チームの白星に貢献し続けた。

 5月29日楽天戦で初のDH解除、7月3日ソフトバンク戦では、投手として史上初の初球先頭打者本塁打の離れ業をやってのけた。6月5日巨人戦で日本最速記録の163キロをマークすると、9月13日オリックス戦では、さらに更新する164キロをたたき出した。投打で幾度となく、歴史を塗り替えるシーンを刻み、チームをけん引した。

 今季開幕の前日、「1勝1勝を積み重ねて、最終的に優勝できればいいです」。シーズン終盤を見据えていた大谷。この日3年連続2桁の10勝目に到達、打率3割2分2厘、22本塁打。投げて、打って、全力疾走を欠かさず、ファンを魅了し続ける22歳の進化のスピードは、加速度を増すばかりだ。