長泉中の土屋愉菜投手(2年)が、静岡県中学選抜野球で完封勝利を飾って話題になったが、1学年上には最速119キロで本格派女子エースがいた。長田西中の鈴木妙英(3年)だ。今春から京都外大西高(京都)に進学し、女子硬式野球に挑戦することが決定。硬球で140キロ、3年後のプロ入り、侍ジャパン女子代表を目指す。

 鈴木は決断した。静岡県内の高校には女子野球部がなく、男子と一緒に野球部に入っても、高野連の規定から公式戦には出場できない。だが、野球は続けたい。その思いで、県外高校の女子硬式野球部に入ることを選んだ。

 「マネジャーではなく思いきりプレーして、日本一の投手になりたいです」

 小4で甲子園出場を思い描いた。2011年夏、8年ぶり出場を果たした静岡高の選手が、聖地で躍動する姿を見て憧れた。だが、中2の時、小学生時代の監督から「高校では女子選手は試合に出られない」と教えられ、初めて現実を知った。ショックだったが、同時に女子硬式野球に興味を持ち始めた。そして、選んだのが京都外大西高。13年創部で15年春には全国選抜大会優勝を飾った強豪だ。

 京都外大西には、浜松ボーイズから星川あかり(18)が進み、全国制覇にも貢献した。日本代表候補の星川は、今春から女子プロ野球リーグのレイアに所属。真鍋知尚監督(50)は、入れ替わりで入学する鈴木へ大きな期待を寄せている。「(鈴木は)星川と同じくプロや日本代表に入れる素材。私が見た中で高校、大学を含めても5本の指に入る投手で中学生では初めて。ケガをしなければ5月から使います」。

 真鍋監督がほれ込む鈴木の武器は直球だ。県4強長泉中の土屋は最速107キロだが、鈴木は119キロ。既に硬球での練習を始めており、真冬の2月中旬に115キロをマークした。本来、空気抵抗の少ない硬球は軟球よりも球速が出るとされ、鈴木は「140キロを目指します」と言った。その上で「チームに貢献して、高校で日本代表に入り、女子プロ野球に行きます」と宣言した。春からその1歩が始まる。【大野祥一】