<広島7-8日本ハム>◇17日◇広島
「はじめまして」の快音には、「さよなら」の思いがこもっていた。稲田が思い出の広島市民に、ささげるこん身の一振りを見せた。同点にされた直後の5回2死満塁。フルカウントからスライダーに食らいついた。高いバウンドで広島大竹の頭上を抜く。勝ち越しの中前2点適時打。序盤からのシーソーゲームの行方を、一気に日本ハムへ引き寄せた。決勝打になった。
広島出身。幼少時から大の赤ヘル党だった。何度もカープの応援に訪れ、プロ野球選手になる夢を膨らませた原点だった。「子どものころからこのグラウンドに立つのが夢だった」。そんな“聖地”では、プロになって初安打。昨季は2試合に出場したが、2打数無安打だった。ラストチャンスの今カードで、ようやく成長した姿を披露し、堂々の里帰りを果たした。
一塁側スタンドには、北海道から恵夫人と1歳の愛娘の愛輝(あいら)ちゃんと、広島にいる家族、知人らが駆けつけていた。同じく6回2死満塁でも中前適時打。かつてはその一員だった真っ赤な大応援団を敵に回し、2安打3打点と活躍した。「なくなってしまうのは寂しい」。今季限りで半世紀以上の歴史に幕を下ろす広島市民の歴史に、日本ハム稲田直人の足跡もしっかりと刻んだ。【高山通史】




