<楽天2-6ソフトバンク>◇25日◇Kスタ宮城

 打率0割台男が、意地の一打でチームの窮地を救った。2-1の9回、守護神馬原が打たれ延長戦突入。直後の10回、ソフトバンク田上秀則捕手(30)が2死満塁から決勝の2点適時二塁打を放ち、試合を決めた。今季56打席目で4本目の安打。開幕から極度の打撃不振で2度の2軍落ちを味わっての初安打は、値千金の輝きを放った。

 気迫が、バットに乗り移った。10回表2死満塁。田上は、楽天川岸の内角直球を思い切り振った。球は芯を外れ、どん詰まり。だが、打球はフラフラと一塁の頭上を越え、右翼のライン上に落ちた。決勝の2点適時打。悩める男が泥臭くも、開幕73試合目でようやく果たした仕事に、声を張り上げ喜んだ。

 田上

 敬遠の悔しさもあった。何とかここでやったろ、と思った。

 2死二、三塁、楽天は前打者長谷川を歩かせ満塁策をとった。無理もない。この打席まで打率は0割6分1厘。昨季チーム本塁打王(26本)だったプライドをかなぐり捨てた。グリップエンドのギリギリを持つバットを、この打席では指3本分ほど短く握った。

 田上

 どれくらい短く持ったか覚えていない。どんどんバットも短くなっていってるけど、これからもああいう場面で打てるようにしたい。

 抑えの馬原が9回に追いつかれた嫌なムードを消し去った。4月14日(オリックス戦)で本塁打を放って以来、72日ぶりとなる今季4本目の安打はまさに値千金。ここまでの2打点はこのソロと犠飛。走者を置いて放った今季初の適時打で、見事に勝利をもたらした。「絶対負けられないゲームだった」と女房役としても胸を張った。

 開幕マスクをかぶった今季は、極度の不振ですでに2度の2軍落ちを味わった。2度目の2軍行きとなった5月22日からは、その表情に明るさがなくなった。時を同じくして左手薬指の靱帯(じんたい)も痛めた。けがのことは必要最低限の人にだけ伝え、炎天下の雁の巣球場で黙々と地味な基本動作の練習を繰り返した。「1回地獄を見てるから。またはい上がるだけです」。05年秋に中日を戦力外になったが、昨季は長打力を生かし正捕手の座をつかんだ。山崎のケガでまわってきたチャンスを、逃すわけにはいかない。

 まだ打率は0割8分だが、どんなに打てなくても積極性は失わない。10回の打席でも初球から果敢にフルスイング。秋山監督も「(田上は)タイミングがあっていた。よう打ってくれた」と、悩める男に復調の兆しが見えたことを喜んだ。【倉成孝史】

 [2010年6月26日11時30分

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