打線のため、ひと役買います!

 阪神能見篤史投手(31)が12日、甲子園でシート打撃に登板する。先発予定のCSファーストステージ初戦、16日巨人戦(甲子園)に向け、実戦感覚を保つ大事なマウンド。ただ、完ぺきな投球で封じ込めれば、打線の調子を狂わせる可能性がある。平成ダイナマイト打線を勢いづけるため、打たれることも覚悟。自分だけでなく、打線にも気を配る“一石二鳥”の登板を目指す。

 CS開幕4日前、観客のいない甲子園で豪華な対決が繰り広げられる。能見vs新井、鳥谷、マートン、ブラゼル…。16日から始まるファーストステージ巨人戦に向け、12日にシート打撃が開催される。目的は2つだ。実戦感覚のキープ。そして、「平成ダイナマイト打線」への点火-。

 能見

 (打たれるのは)割り切れるので全然大丈夫です。それよりボールのキレとかをね。シーズンを投げた反動も残っているし、バッターとの感覚が重要。結果は気になりません。

 レギュラーシーズン最後のマウンドは5日ヤクルト戦。次回は16日のファーストステージ“開幕戦”に先発予定だ。中10日の間隔が空く中、貴重な実戦形式の場。ただ、実戦さながらの快投を演じるとリスクも少なくない。相手は虎の主力打者。激しい内角攻めや空振り連発で仲間の調子を崩す訳にもいかない。自身の状態を確認しながら、相手も気遣いつつの投球。2回程度を投げる予定だ。

 「マートンだって紅白戦で僕が打たれてから良くなったでしょ?(笑い)それは冗談ですけど」。

 ジョークで振り返ったのは春季キャンプだ。2月23日の紅白戦(安芸)で、紅組先発の能見は3回3安打無失点と好投。ただ、白組の1番マートンには中堅二塁打を含む2打数2安打と打たれた。赤毛の助っ人はこの試合まで実戦3試合で9打数1安打と苦しんでいたが、この日来日初の猛打賞を記録し、一気に調子を上昇させた。もちろん、わざと打たせたわけではないが、マートンが目覚めた過程は覚えている。

 今回はシーズン終盤に調子を落としたブラゼルも相手にするかもしれない。怪力助っ人はラスト15試合で打率2割1分1厘と苦しんだ。打者の復調も手助けできれば、言うことはない。宿敵巨人との決戦に向け、手を抜くつもりは毛頭ないが、互いに相乗効果を生み出せたら最高だ。この日は甲子園全体練習でキャッチボール、ダッシュなどの調整。きっちり状態を整え、シート打撃に臨む。

 思い返せば05年、日本シリーズ直前合宿のシート打撃。初日、2日目と投手陣が主力野手を完全に抑え込み、本番ではロッテに4連敗。打線は4試合で計4得点しか奪えなかった。二の舞いは避けなければいけない。「打たれるのは関係ない。(本番前の)今、絶好調になったところでね」。どこまでも冷静な能見。チーム全体を考え、自身、そして打者にもメリットのある投球を-。難題をクリアし、虎の力を存分に引き出す。【佐井陽介】

 [2010年10月12日11時0分

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