<楽天0-4西武>◇7日◇Kスタ宮城

 シャットアウトの快感なんて、忘れかけていた。西武ミンチェ投手(34)自身、9年ぶりの完封。志願して最終回もマウンドに上がった。得意のシュートとスライダーを内外角へ丁寧に散らし打たせていたが、8回で球数は128。それでも、首脳陣の「いくか?」という打診に迷いなく続投を願い出た。9回を3人で退けてチームに今季初の3連勝をもたらすと、試合後は照れまくり。「(9年ぶりで)ちょっと恥ずかしいです。お待たせしました」とはにかんだ。

 来日2年目に2ケタ勝利を挙げるなど活躍したが、成績は徐々に下降した。渡辺監督が2軍監督だった時はファームでくすぶっていた。気落ちしていないか心配で、ミンチェを食事に誘ったことがあった。「酒もたばこもやらないんだよ。珍しい台湾人だよね。おかげでこっちばっかり酔っちゃったよ」。台湾で暮らしたことがあっただけに、その勤勉でまじめな性格がより印象的だったという。

 昨年は開幕から先発で奮闘。しかし、エース同士のつぶし合いを避けたローテーションにより、日本ハム・ダルビッシュとは1カ月間で3度投げ合った。好投しても勝てず、愚痴をこぼすこともあったが腐らなかった。今季は救援スタートでビハインドからのロングリリーフが主な仕事。それでもモチベーションを保ち続け、巡ってきた今季初先発で最高の結果を出した。「自分ができる仕事だけを考えていた」との言葉には、実直な右腕ならではの説得力がこもった。

 来日12年目。もう通訳はいらないほどの“ベテラン助っ人”だ。ヒーローインタビューでは、自分の言葉でファンに呼びかけた。「名前を覚えてください」。今年から登録名を「許銘傑」から「シュウ・ミンチェ」に変えた。涌井が登録抹消となった今、耳慣れない名前のこの右腕が、先発陣の救世主になるかもしれない。【亀山泰宏】