<広島5-4巨人>◇14日◇マツダスタジアム

 指揮官の猛抗議、サヨナラ死球…。広島が執念で今季初のサヨナラ勝利を収めた。1点を追う9回裏。1死二塁の好機でトレーシーへの低めの球をストライクと判定されると、野村謙二郎監督(44)が球審に猛抗議。その後、ロメロの暴投で同点に追いつき、2死満塁で石原慶幸捕手(31)がサヨナラの押し出し死球でドラマを締めた。一丸野球で今季初の3連敗を阻止だ。

 土壇場でカープナインの執念が光った。1点を追う9回。同点に追いついてなおも2死満塁で石原が打席へ。巨人ロメロの初球が胸元を襲う。その瞬間、白球は選手会長の左手首を直撃して転々…。サヨナラだ。押し出しだ。チームリーダーは痛みをこらえ、右腕を突き上げてガッツポーズ。お立ち台に上がると照れ笑いを浮かべた。

 「え~、僕でいいのかどうか迷いましたけどチームが勝てて良かったです。みんながつないでくれたチャンス。それまで自分自身、打てていなかった。体に当たって、ホント良かった」。

 この日は序盤から終始、追う展開だった。野村監督のタクトも勝利への流れを作った。1点差の9回無死一塁。広瀬に直接、耳打ちして、手堅く送りバントを成功させた。1死二塁でトレーシーが打席へ。ボールが2球先行した3球目だった。低めへの球をストライクとジャッジされると、指揮官が猛然とダッシュ。嶋田球審に詰め寄り、猛抗議した。「最後のワンチャンスで大事な場面。誰が見てもボール。僕には完全にボールに見えた」。1球にこだわり、闘志を表した。

 大型連敗しないのがシーズンを優位に戦うための鉄則だ。7回以降は4投手で必死の継投。逆転サヨナラ勝ちにつなげた。今季初の3連敗を阻止し、石原も手応えを口にする。

 「どんな形でもあきらめることなく、個人がちゃんと役割を果たせば、いい形になる。自分に回るなら同点の場面。何とか自分で決めるしかないと思った」。

 覚悟を決めた。年明けの鹿児島・最福寺。燃えさかる炎の前で読経する護摩行を行うのが近年の習慣だ。「あの痛みはやった者にしか分からない」。修行直後には額に真っ赤なやけどの痕が残る。壮絶な精神鍛錬が心の支えだ。ヘルメットやグリップエンドには、梵字(ぼんじ)のシールを貼り、幸運もたぐり寄せる。負の流れを断ち、交流戦まで残り1試合に迫る。石原は言う。「いいスタートを切れた。どんどん勝っていきたい」。勝利に飢えた赤ヘル軍団は着実に強くなっている。【酒井俊作】