<楽天3-0広島>◇1日◇Kスタ宮城
雨を味方に通算50勝到達だ。楽天先発の田中将大投手(22)が7回を投げ被安打6、無失点の4勝目。入団5年目で節目の勝ち星をクリアした。試合途中から降り出した雨も気にせず、回を追うごとに変化球の軌道がアップ。要所を締める111球。滑るとされる統一球を自在に操り、広島戦の連続無失点リレーが決まった。
グイッと曲がった。6回1死一、二塁。広島トレーシーへの9球目は外から中に入るスライダー。田中は「ほえる場面でもなかったですね」と照れ笑いで振り返ったが、タイミングを外し二ゴロ併殺。「シャッー!」と叫びヤマを越えた。本人は「そうでもなかった」と言ったが、ここぞの場面、鋭く曲がり落ちる変化球で切り抜けた。
途中から雨が降り出した。はた目には投げにくい条件だった。だが、その雨が田中の変化球に追い風となった。空気がボールにどんな物理的作用を及ぼすか。「流体力学」で説明できる。試合開始時、Kスタ宮城周辺は80%の高湿度。試合終了時は88%まで高まった。ボールは大量の水蒸気に加え雨粒ともぶつかり大きな抵抗を受けた。この抵抗が大きいほど、ボールの回転にかかるブレーキが強まる。ブレーキが強いほど変化も大きいと推理できる。「ジャイロボール」の名付け親で、野球の動作に精通する手塚パフォーマンスコーディネーターが「可能性はあると思う」と認めた。
「スピン」の要素からも説明できる。回転数が多いボールほど空気から受ける抵抗が強まり、変化が増す。雨にも、田中は「指先が気になるほどじゃなかった」とスピンの利いたボールを投げ続けた。滑るとされる統一球も「日本は湿度が高いから大丈夫」と話してきた。梅雨が近づき、ボールはしっとり感を増す。雨も味方にする強い肉体と、統一球を御す繊細な技術。制球を乱した2年目の広島今村とは経験値が違った。
ドラフト制導入後10人目となる高卒5年以内の通算50勝達成。星野監督は「田中が一流ということだ」と目を細めた。もっとも、田中自身は「あまり節目とは考えていません。去年のうちにクリアしないといけなかった」。目指すところはずっと上にある。【古川真弥】



