<阪神7-0楽天>◇19日◇甲子園

 城島の代役なんて言ったら、失礼ですわ。阪神藤井彰人捕手(35)が、古巣楽天戦で大暴れです。打っては決勝打を含む2安打1打点、守っては好リードでスタンリッジの今季初完封を導きました。初めて立った甲子園のお立ち台でも、軽快トークで虎党のハートをわしづかみ。もはや、欠かせない存在です。

 甲子園のお立ち台に、藤井彰の笑顔があった。決勝打を含む2安打を放ち、守っては完封リレーを導いた。マンモスの大歓声を受け、喜びをかみしめながら、ファンの心もつかんだ。

 藤井

 うれしいですね。でも、今日は僕じゃなくて、鳥谷じゃないんですか?

 謙虚な本音に、スタンドがわいた。楽天からFAで移籍して1年目。古巣に恩返しの勝利を挙げ、虎ファンにもすっかり受け入れられた。

 2回1死一、三塁。昨季までのチームメート永井のスライダーを、引っかけながら三遊間を破った。打球が抜けた瞬間、右の拳を握った。もぎ取った先制点が、決勝点になった。

 18年前に無くした思い出を取り戻した。近大付時代、2年夏に甲子園に出場し、2回戦で敗退した。チームの取り決めで、2年生は土を持って帰ることを禁じられていた。だが、衝動を抑えられなかった。スパイクで土を集めてこっそり袋の中に詰め込んだ。「金城(現横浜)はばれてしまって、めちゃくちゃ怒られてた」。3年夏に甲子園行きを逃し、母親に土のありかを尋ねた。「無くなったわ」と言われ、ショックを受けた。当時から、甲子園は特別な場所だった。

 愛娘からパワーをもらった。前日18日は自身35度目の誕生日。長女・彩乃ちゃん(8)に「パパがんばってね」と手紙をもらったがコールド負け。スタメン出場した試合の連勝は5で止まった。反省が頭をよぎる中、帰宅するとナイター後にもかかわらず長女が出迎えてくれた。

 彩乃ちゃんには、物心ついた頃から、野球を見る習慣が付いている。ふがいないプレーをすれば「何やってんねん」と一喝されることもある。この日の朝「パパがんばってね」と送り出された。父の日に、期待を裏切るわけにはいかなかった。

 藤井

 見に来てくれたお父さん、応援してくれたお父さん、今日はおいしいビールを飲んで下さい!

 威厳を保った世のパパの鏡が、晴れ舞台で「同士」と喜びを分かち合った。【鎌田真一郎】