<広島3-4中日>◇29日◇マツダスタジアム

 中日はまた広島を寄り切り、ヤクルトとの3ゲーム差をキープした。同点の8回に主砲トニ・ブランコ内野手(30)が左前に決勝打を放った。1軍復帰後、2試合目となる6番和田一浩外野手(39)も左翼に特大アーチを放った。主力が期待通りの活躍で貯金は今季最多の「11」。これで9月は15勝5敗3分け。逆転優勝への勢いは止まらない!

 「待ってました!」といわんばかりだ。ブランコが広島豊田のカーブをはじき返した。3-3。同点の8回1死二塁。打ち抜いたボールは左翼松山の前に転がった。井端が本塁を駆け抜けて勝ち越し。1回にも先制犠飛を放っており、1安打2打点。またまたヒーローは頼れる4番だ。

 ブランコ

 チャンスだったので何としてもランナーをかえしたかった。とにかくバットを出そうと思っていたよ。

 試合終了と同時にマツダスタジアムには雨が降りだした。そんなことを気にするそぶりもなく、背番号42は笑った。練習終了後に誰よりも早くベンチに入り、臨戦態勢を整えていた。誰とも話すことなく黙々と、だ。すべては「監督のためにも絶対に優勝しないといけない」という強い思いからだ。

 恩返しをしたい-。それはこの男も人一倍感じているはずだ。前日28日に1軍に復帰したばかりの和田だ。気持ちがバットに乗り移ったのは4回。前田健の4球目スライダーを迷いなく振り抜いた。魂を込めた打球は左翼席裏のコンコースに着弾した。今季11号ソロ。苦しみ向いた男にとって31打席ぶりとなる安打で、本塁打となれば、8月18日巨人戦以来、81打席ぶりだった。

 「1回でも多く塁に出られるように頑張るだけです」。試合後のバスに乗り込む和田に笑顔はなかった。ただ、指揮官は大きな手応えを感じているはずだ。

 「良い動きしてますよ~。みなさん」

 落合監督は報道陣に目を合わせることなく、ここ最近おきまりのフレーズを繰り返した。首位ヤクルトが勝ったため、ゲーム差は3のまま。だが、あんなに苦しんだはずの打撃陣がそろって結果を出している。逆転Vへ、失速の2文字は無縁だ。【桝井聡】