<日本ハム1-3楽天>◇5日◇札幌ドーム

 日本球界最高峰の投手に投げ勝った。日本ハム戦に先発した楽天井坂亮平投手(26)が、6回1失点と好投し自己最多となる3勝目を挙げた。相手先発はダルビッシュ。先制点献上が許されない状況でコーナーにボールを散らし、5回先頭の中田にソロ本塁打を打たれるまで無失点で踏ん張った。2位確保とタイトルのかかったダルビッシュに投げ勝った経験を、今後の自信にしたい。

 コーナーに妥協なく投げきった。内角を突いて起こし、ツーシームをより効果的に引き立てた。井坂が振り返る。「ブルペンから調子が良く、気負わずにいけました」。先月中旬、Kスタ室内ブルペンで星野監督から付きっきりで指導をもらった。130球、1時間の講座を終えると「3試合分投げた感じです」と息をついた。あの緊張に比べれば、ダルビッシュ相手の投手戦も自然体でいけた。

 「小差の試合になる」と腹をくくり「ゴロのヒットは仕方がない。バッター1人1人と勝負する」と決めた。日ごろ散見される危険な抜け球も一切なし。捕手伊志嶺と集中していた。3番糸井、5番稲葉をともに無安打。怖い左の中軸を封じ、打線をど真ん中で寸断した。社会人出身の3年目にして、この日の白星がシーズンベストとなる3勝目。過去2年はケガに苦しみ年間通しての活躍ができなかった。順風満帆な道のりではなかっただけに、「3勝、うれしいです」。自身にとっては大きな価値があった。

 この1勝に価値を見いだしたのは井坂だけじゃなかった。星野監督も「今日みたいなピッチングをしてくれればいい。2ケタ勝てるよ」と太鼓判を押した。シーズン序盤から先発ローテーションに組み込み、KOを食らっても辛抱強く起用してきた。「この辺りの選手が伸びてくれないと、ウチに将来はないから」が口癖。資質を認めるからこそ、シーズン最終盤で開花しつつある素材がうれしかった。

 握りから懇切丁寧に伝授したツーシーム。監督は試合前のベンチで統一球を握り、こう話していた。「ボールを動かすピッチャーが、ウチには本当に少ない。真っすぐ、スライダー、フォークだけじゃ絶対に抑えることなんて出来ない。自分を楽にするんだ。もっともっと、探求心をもって練習してほしいな」。井坂はこの日、打者の手元でツーシームを動かしまくった。今までと変わらずコツコツ鍛錬を重ね、楽天一の使い手となればいい。【宮下敬至】