<中日2-1広島>◇5日◇ナゴヤドーム

 中日浅尾拓也投手(26)が、大きな1歩を記した。1点リードの9回から登板し、昨季自らが樹立した球団記録を更新する「シーズン73試合登板」を達成した。広島の2番から始まる中軸を3人で仕留め8セーブ目。首位ヤクルトに0ゲーム差とするチームの勝利に貢献し、球団新記録に花を添えた。疲れを知らない若き鉄腕が見えてきた優勝に突き進む。

 登板前から浅尾は燃えていた。「この勝ちは絶対に渡さない」。そんな気迫が、全力で投げる投球練習の姿に表れていた。9回表、先頭打者の赤松を初球148キロの直球で遊ゴロに仕留めると、続くバーデンは直球で押し最後はスライダーで見送り三振。栗原も直球で遊ゴロに抑え8セーブ目を挙げた。球団新の73試合登板。自分が作った記録を自分で塗り替えた。

 浅尾

 チーム最多登板は別にして、勝ったことが大きい。ヤクルトにはまだ勝率で負けているので、完全に上回れるようにこれからも1戦1戦自分の仕事ができるように頑張りたい。

 試合後、チーム最多登板記録のことについて多くは語らなかったが、ヤクルトとの最大10ゲーム差をついに「0」にしたのは、8月以降31試合に登板した浅尾の頑張り抜きには語れない。

 3週間前。デパートに向かった。9月3日広島戦(マツダスタジアム)で通算300セーブを達成した岩瀬のプレゼントを買うためだ。投手陣を代表して山内、平井とともに岩瀬のためにキャリーバッグを購入。数日後に開かれた食事会でプレゼントした。9月23日のヤクルト戦で、押し出しで同点に追いつかれネルソンの白星を消してしまい「本当に申し訳ない」と小さくなっていた。しかし体力的にも精神的にも極限まで追い込まれていても「フォア・ザ・チーム」の精神を忘れない姿にチームメートの信頼は揺るがない。

 逆転Vへ向け残り14試合。浅尾には、すべての試合で投げる覚悟は出来ている。【坂祐三】