「前田と申します」。プロ23年目の広島前田智徳外野手(40)が12日、広島・廿日市市内の大野寮グラウンドで、新人選手に“自己紹介”を行った。この日、新人合同自主トレが開始。同じ敷地内でトレーニングを行っていた前田智が先手を打った。「強くあってほしい」。21年ぶりのリーグ優勝を目指す、新たなチームメートに金言を授け、自分自身も奮い立たせた。

 オーラを見せつけた。新人合同自主トレ初日、午前中のメニューを終えた新人8人は、室内練習場へ移動した。前田智にあいさつをするために。横一列に並んだ新人からは、緊張感がにじみ出ていた。重い空気を打ち破ったのは、23年目のベテランだった。

 「こいつらが自己紹介するより、おれが自己紹介した方が早いだろ」

 天才打者のひと言に、場の空気が和んだ。一瞬、笑みを浮かべ、再び真顔になるとあいさつを始めた。

 「前田と申します。よろしくお願いします。皆さん、地道に頑張って下さい。いろんな事を経験して、強くあってほしいと思います」

 新たなチームメートに、授けた金言は「強くあれ」。幼少時代から広島ファンだったドラフト4位の土生翔平外野手(22=早大)は、「大先輩で、偉大な方の言葉でありがたい」と感動しきり。緊張しっぱなしの新人の心に響き渡った。

 前田智は前日に引き続き、この日も1人で黙々と入念にトレーニングに打ち込んだ。不安を抱える両脚のケアにも、ひとしきり時間をかけている。新人合同自主トレの開始時間10時から、終了時間の14時半を回ってもトレーニングは続いた。昨季は代打要員として52試合に出場し、2割5分、13打点をマークした。昨年12月の契約更改では、長年抱く「悲願」を口にしていた。

 「しっかり体調を管理しないと、次がない。地道なことを、粘っこくやって戦力になるようにしたい。(91年のリーグ優勝は)自分は2年目。経験していないに等しい。優勝したい」

 言葉どおりのオフを過ごしている。ドラフト指名された89年は、野村や土生ら大卒選手が誕生した年。大先輩がルーキーと共闘し、21年ぶりの歓喜を目指す。【鎌田真一郎】