<オールスターゲーム:全パ6-2全セ>◇第3戦◇23日◇盛岡

 東北に復興への希望のアーチが架かった。岩手県営野球場で行われた球宴第3戦で、全セのヤクルト畠山和洋内野手(29)が4回無死、右翼スタンドへソロ本塁打を放った。東日本大震災復興支援として開催された一戦で、岩手県出身の畠山が勇気を、ホームランという最高の形に変えて届けた。試合は全パが快勝して3連敗を阻止し、3ランを含む4打点の日本ハム陽岱鋼外野手(25)がMVPを獲得した。

 汗と涙が染み込んだ地元の球場で、畠山がホームランという結晶を生み出した。岩手・花巻市出身のスラッガーに1発をと、誰もが願う一戦。その期待にフルスイングで応えた。

 思いをかなえたのは4回無死。楽天塩見に対する初球は左翼ポール際への場外ファウルだった。興奮と少しの失望が入り交じった大観衆の声援を聞き、畠山は決意を改める。「もう1回、スタンドを沸かせてやろう」。そしてカウント2-2の5球目。外角高めの140キロ直球を強振し、白球はライト方向へ。「届くかどうか半信半疑だった。でも岩手の声援が一押ししてくれた」。打球は右翼フェンスを越えて青々とした芝に着地。「特別な気持ちで1周した」。ベースを回る地元のヒーローに大歓声が降り注いだ。

 特別な意味を持つ一戦だった。東日本大震災復興への支援を込めた、生まれ育った岩手での試合。試合前には選手会を代表して「我々、プロ野球選手は厳しい環境にある方々をこれからも全力で応援します」とスピーチ。プレーではフルスイングで表現した。9回の最終打席は楽天青山から9球連続で直球勝負を挑まれた。「振った後、腰が抜けそうになった。120%のスイング」。最後の左前打でも魅了した。

 故郷が力を与えてくれた。前日22日、第2戦の松山から移動後、花巻市にある実家に昨年12月以来の帰省。球宴用の「go

 for

 it(がんばれ)

 岩手」と刺しゅうしたゴールドのグラブをスパイクとともに持ち帰った。「今まで野球の物を持って帰ったことなんて、ほとんどなかったんだけどね」。この日球場には両親、兄夫婦、祖母、妻ら7人を招待。中日高木監督には「オレの(招待用)チケットを使っていい」と言われ、この日は4番の座を用意された。舞台は整っていた。

 岩手県営野球場は野球人生で涙を流した数少ない地だ。「考えてみると、野球で泣いたのはあの時だけだから。高2(専大北上)の夏(の県大会)は負けて泣いて、高3は勝って泣いた」。試合前のホームラン競争へ臨む前に「普段の練習でも1、2本ぐらいしか打てない。恥をかかないようにしたい」と、ちょっぴり弱音を吐いた。だが試合で放った特上のアーチに弱さはなかった。

 復興はまだ道半ば。来年も福島で球宴が開催される。「自分はこの岩手で育った数少ない野球選手の1人。勇気を与えられればと思って臨んだ特別な一戦で打てて、今後の自信になった」。希望の思いが詰まったアーチを、岩手の地に届けた。【広重竜太郎】