<練習試合:阪神1-1オリックス>◇2日◇高知・安芸

 打線が低調、それがどうした!?

 黄金ルーキーの衝撃デビューに虎の指揮官の目尻も下がりっぱなしだった。昨年ドラフトで「阪神藤浪」を誕生させた和田豊監督(50)は、プロ初実戦を2回無失点で滑り出したドラフト1位藤浪晋太郎投手(18=大阪桐蔭)を絶賛した。

 笑いが止まらなかった。高知・安芸の青空のように、和田監督は爽やかな笑みを浮かべていた。快勝…したわけではない。打線爆発…いや、低調だ。理由は1つ。かわいいドラ1息子が、期待通りにデビューしたからだ。

 報道陣に囲まれると、待ち切れんとばかりに逆質問を切り出した。「本人は何て言ってる?」。藤浪の自己採点70点を聞くと、また頬が緩んだ。「レベルが高いな~。上出来、上出来よ」

 与えた課題は「思う存分投げてくれ」だけ。存分過ぎるほどの球威に、ベンチで魅せられた。ダイジェストにしたのは1回無死一、二塁でT-岡田を3球三振に斬った場面だ。藤浪の「狙った」発言を聞くと「そう言ってた?」とまたニンマリした。

 和田監督

 あれが一番良かったし、本来の投球だと思う。カットかな?

 左打者にあれだけ突っ込めるからね。ストライクゾーンにいったら相手に打撃をさせなかった。クイックだったり、セットもできているし。勝負にいった時の投球フォーム、マウンドさばき、実戦向きやね。

 ドラフトではオリックスなど4球団と競合した地元関西の「金の卵」を左手で引き当てた。1月の新人合同自主トレから捕手を座らせず、球数も制限。この日も試合前には投球練習中のブルペンへ足を運び、親のような温かい視線でマウンドへ送り出した。

 力強さに加え、修羅場をくぐり抜けてきた高校3冠右腕のハートにも首脳陣はイチコロ。黒田ヘッドコーチが「あそこ(1回のピンチ)でガタガタいってもおかしくない。勝負強いな」と言えば、中西投手コーチも「ランナーが出ても全然動じない」と目を細めた。

 用意している開幕ローテーションへ、あらためて「○」と記した30球だ。次回は40~45球をメドにする。和田監督は「感性で持っているものを出してくれれば」と期待した。数々の猛虎戦士を生み出してきた地から踏み出した第1歩。「卵」の殻を破り始めたヒヨコは、親も計り知れない力を持っていそうだ。【近間康隆】