<オープン戦:DeNA4-14阪神>◇15日◇横浜
待望のタテジマ1号がここで飛び出すのも因縁か。阪神福留孝介外野手(35)の低弾道がハマスタの空気を切り裂いた。1回1死一塁、3ボールからの直球を、迷いなく振り抜いた。右中間へのライナーかと思われた打球が、そのままスタンドに突き刺さった。
「オープン戦だし、自分のスイングをするだけ。自分の練習のためだから。自分のタイミングでスイングができている」
3ボールからの一振りを問われ、淡々と振り返った。本塁打に対しても特別な感情を表すことはなかった。周囲は、初アーチに期待が高まる。和田監督が興奮気味に言った。
「久しぶりやな。あんな打球を見たのは。あの低さで入るということは、よっぽど芯に当たっているんじゃないか?」
実は長距離砲として期待する周囲と、本人の目指すところには若干の食い違いがある。中距離打者を自任する福留は常に低く、強い打球を心がけてきた。それは、浜風が立ちはだかる甲子園でも不変のスタンス。阪神入団後、常にこう言っている。「ホームラン?
狙わないよ」。打球を打った先にあるのがフェンスなのか、スタンドなのか。打者として自分を見失うことはない。ただ、それでも、統一球をライナーでスタンドまで運ぶ力があることを証明した。
昨年オフ、阪神と福留争奪戦を繰り広げたDeNAとの対戦。福留は最後の最後まで返答を待ってくれたDeNAに感謝している。シーズンで何度も顔を合わせる相手にインパクトのある“恩返し”だった。【鈴木忠平】



