<オープン戦:ロッテ2-5巨人>◇17日◇QVCマリン
侍の刀が巨人大田泰示外野手(22)に宿った。ロッテ戦で6回、藤岡からレフトスタンド中段へ120メートル弾を放った。WBC開幕前にテレビで見た侍ジャパン松田の積極打法に原点回帰。これまで実戦で7打席連続三振など不振にあえいでいたが、脱出のカギをWBCでの日本の戦いぶりに見いだした。侍の勢いを借りて、大田が開幕1軍へ前進する。
とにかく振る。刀を抜く。6回。侍の教えを大田が実行した。ファーストストライクこそ見逃したが3度バットを振り、フルカウントまで粘る。そして8球目。ロッテ藤岡の高めに浮いた134キロ直球をとらえた。豪快な打球が左翼席中段へのオープン戦1号となった。「最高でしょう。タイミングがしっかり取れた。次につながるバッティングだった」と打撃内容に余韻の残る言葉を口にした。
WBC開幕前にテレビの特集で見たソフトバンク松田の打撃論に見入った。「松田さんが初球の安打率がすごく高いと言っていた。どうしても投手はファーストストライクは甘い球になる。初球を振っても三振はないから」。ファーストストライクを狙う-。打撃の根幹だが、その時の大田の心にはストンと落ちた。
その原点も見失うほど、悩んでいたからだ。2月下旬。どん底に落ちた。対外試合で7打席連続三振。「もう野球人生が終わるんじゃないかと思った。練習の時は調子よく打てるのに当たらなくて、バットに穴が開いているんじゃないか?
と疑ったほど」。沖縄キャンプ中には2軍降格も検討された。結局、回避できたが、この日の試合前までのオープン戦打率は1割5分8厘。開幕1軍は風前のともしびだった。
松田の教え、そして決勝ラウンド進出を決めたオランダ戦で鳥谷の先頭打者弾を見て何度も痛感した。「どんどん振ることが大事なのをあらためて感じた。振っていかないとタイミングも合わない」。現役選手にとってもWBCでの戦いは最高の生きた教材だ。
この1発を肝心の指揮官が見られなかった。原監督は侍ジャパン応援のため、前夜に渡米。だが大田はきっぱり言った。「見てくれている人は見てくれている。自分のやることをやるだけです」。大田は今は刀を研ぎ、シーズンで抜刀する。【広重竜太郎】



