<巨人4-2阪神>◇16日◇東京ドーム

 やっぱり、この男だった。巨人阿部慎之助捕手(34)が、今季の阪神戦33イニング目で初、昨年を含めれば38イニングぶりとなる得点をたたき出した。2点を追う3回1死一、三塁、能見から右翼スタンドへ逆転3ランを放った。甲子園での前回対戦では、能見に完封されるなど3試合で無得点という球団ワースト記録の屈辱を味わったが、能見から通算73打席目で初本塁打。本拠地できっちりやり返し、またセ・リーグの貯金を独占した。

 阿部の中ではコンマ数秒立ち遅れた。3回1死一、三塁。阪神エース能見のクイックモーションに始動が遅れた。内角寄りの高めの直球。だが右足のステップを低く抑えたことで、対応できた。差し込まれた分を左腕の押し込みで、はね返した。右翼席中段に飛び込む7戦ぶりの2号3ラン。今季阪神戦33イニング目で初得点となった。「(1週間前に完封された)前回はほぼ完璧にやられていたので借りを返したかった」と思いを晴らした。

 能見から打った初めての本塁打は、長年をかけて磨いてきたクイック対策の成果だった。30歳のころ。当時、打撃コーチを務めていた篠塚和典氏(日刊スポーツ評論家)の助言で、右足を上げる高さを抑えるようにした。クイック投法でタイミングを外してくる相手に対応するためだった。足を大きく上げればタイミングの修正も難しい。だが最小限の上げ幅なら対応しやすい。ベストの低さを探り続けた。

 この日は「頭になかった」とクイックを意識すらしていなかった。能見のクイックは、投じてから捕手が捕るまで1・1秒台。通常は1・20~25秒で合格ラインとされるから、高速クイックと言っていい。それでも遅れずに対応できた。「差し込まれたけど、うまく押し込めた」。通算73打席目での初本塁打に「よく調べたね」と思わずおどけたが、内容の詰まった打撃でもあった。

 能見の能力はWBCでバッテリーを組み、受け止めてきた。「えぐい球を投げる」「WBCメンバーの中で一番安定感がある」と、あらためて思い知らされた。だが同時に球の軌道、フォームも脳裏に焼きついている。宿敵チームのエースに感服するとともに、生きたデータが阿部の頭脳の中に蓄積されていた。

 試合前の打撃練習では左腕の打撃投手に対して、全14球をセンターからライト方向へ引っ張り中心の打撃を行った。いつもは流し打ち中心で感覚を合わせるが、引っ張って球を最後まで押し込む感覚を肌に染み込ませた。その成果が形となって、チームの苦境を救う一打が生まれた。

 1週間前の雪辱をすぐに果たした。だがまだイーブンという思いが強い。「今度チャンスがあれば、甲子園で借りを返したい。それが次の目標となる」。猛打巨人の中心に阿部がいる。それを今後も虎に示し続ける。【広重竜太郎】

 ▼阿部が試合前まで通算64打数14安打(打率2割1分9厘)本塁打ゼロだった能見から初アーチ。通算60打数以上対戦した投手15人のうち、能見だけ1発がなかった。阿部が東京ドームで1発を放った試合は10年から2分けを挟み32連勝。

 ▼巨人は阪神戦最長となっていたシーズン連続イニング無得点を32でストップ。阪神戦の無得点は年度をまたいでもこの試合の2回で最長になり、昨年24回戦(9月16日)の4回から通算37イニング続いていた。年度またぎの過去最長は47~48年に記録した36イニング。巨人は東京ドームで今季9勝1分け(昨季から13連勝)。巨人が本拠地球場で開幕から負けなしの9連勝は、後楽園球場時代の83年(15連勝)以来。