<巨人4-2阪神>◇16日◇東京ドーム
「永遠の0(ゼロ)」は刻めない。強い巨人を本気にさせた能見篤史投手(33)に虎エースの宿命を感じた。前回完封の勢いに乗り、昨季から続く巨人戦連続無失点の球団新記録37イニングを樹立したが、投打に奮闘した爪痕が深い。本当に大事な爪を割ってしまい、打撃の影響で手もしびれていたのか。3回、阿部に逆転3ランを浴びて壮絶にゼロが止まった。それでも能見はエースとして、強い巨人に立ち向かっていく。
左手を思うように操れない。能見は窮地に陥っていた。2回、思うように制球できず、1死満塁のピンチを招いた。2死後、宮国を空振り三振に抑えて脱すると、三塁ベンチへ引き揚げる際、まるで痛みを和らげるかのように、左手をブラブラと振った。
大黒柱として、崩れることはできない。1週間前は甲子園で巨人を3試合連続で完封。2勝1分けで、自身は初戦の9日にシャットアウト勝ちしていた。昨季、5勝15敗4分けと大敗した宿敵だ。敵地での再戦でも勢いをつけたいところだったが「ゼロ伝説」はあっけない幕切れだった。
2点リードの3回1死一、三塁。阿部への3球目だ。内寄り高めの直球を強振され、右翼席に吸い込まれた。痛恨の逆転3ランを浴び、ぼうぜんと立ち尽くす。巨人戦2戦連続完封も幻となった。「(コースも)甘いのは甘い。タイミングを変えて投げたんですけど」と首をかしげた。
大黒柱らしく、背中で引っ張った。投げるだけでなく、打撃にも全力を注ぐ。投手である前に野球選手として能見が貫くポリシーは裏目に出た。2回、2死一塁で打席に立つ。宮国の初球から全力で振り、3度のファウル。そして投ゴロ…。この代償は大きかった。中西投手コーチは「球が浮いていたな。最初の打席で詰まって(手を)気にしていた。そういう影響があるとは言い切れないけど」と振り返る。フルスイングして手にしびれが生じた。能見は「(影響は)2回の時だけだったので」と因果関係を否定するが巨人打線にごまかしが利かなかった。
想定外のアクシデントは続いた。バスへ引き揚げる際、能見は「爪が割れて…。5回が終わったときに気づいた」と衝撃の事実を明かす。リリースの生命線である指先の微妙な感覚も失った。4回には長野にも左前適時打を浴びた。手負いになっても必死に粘ったが、6回4失点でしのぐのが精いっぱいだった。
「ずっと先頭打者を出していたので苦しかった。甲子園と東京ドームは違うので。シーズンは長い。これで終わりじゃない。切り替えるところは切り替えてやります」
対戦前から長打を警戒していたが、最悪の被弾で沈んだ。チームは昨季、東京ドームでわずか1勝。鬼門での今季初陣は首位巨人に屈した。それでも耐え抜こうと奮闘した左腕エースの姿が、明日につながるのは間違いない。【酒井俊作】
▼阪神が巨人戦の連続イニング無失点を37に伸ばし、同カードの球団最長を記録した。12年9月16日(東京ドーム)4~8回に始まり、今季4月9、10、11日の3連戦(甲子園=10日は延長12回)、そして16日の1、2回まで、巨人打線をゼロ封。1リーグ時代の47年8月23日(後楽園)9回から翌48年4月29日(後楽園)にかけて記録した36イニングを更新した。巨人戦の連続無失点試合は、チーム最長タイの3で終了。また先発能見は6回4失点で敗戦投手。球団では85年ゲイル以来、登板間に他カードを挟まないケースでは68年江夏以来となる巨人戦2試合連続完封はならなかった。



