<阪神1-0ヤクルト>◇17日◇京セラドーム大阪

 西岡剛が戻って、トラがしっかりしてきたぞ。ヤクルト小川の出ばなをくじく1回先頭快打。マートンの右翼バレ“強襲”二塁打で、先制のホームを踏んだ。この虎の子の1点を守ろうと、セカンドでもファインプレーを連発。7回1死二塁で森岡の二遊間ゴロに飛びつき、同点打を凡打に変えた。今季17度目完封勝利、しかもしびれる1-0白星。西岡剛内野手(29)の貢献度はピカイチだった。

 グラブは白星をつかむためにあるのだ。西岡には肌身離さないものがある。重厚な銀色のジュラルミンケースには、遠征先ホテルのタグが無数についている。2軍調整中には鳴尾浜のロッカーにも持っていった。グラブの形崩れを防ぐアイテム。守備の「相棒」を大切に扱う。球際での勝負には、そんな真心が生きてくる。

 間一髪だった。1点リードの7回1死二塁。鶴が森岡に低く痛烈なゴロを浴びた。二遊間の二塁寄りへ。外野に抜ければ同点…。その瞬間だ。背番号7がダイビングキャッチを試み、白球をグラブに収めた。

 「鶴が好投していた。投手のリズムがいいと、ああいうプレーが出る。捕れるときもあれば捕れないときもあるから」

 失点を防ぐ殊勲の美技にもクールに振り返った。笑わない理由がある。

 「チームがロードで厳しいときに、離脱してしまいましたから。チームに対して借金があるので、返していかないといけない。チームに貢献したい」

 リードオフマンの真骨頂だった。1回先頭で小川の初球を狙い打ちする。外角直球を強烈に中前へ。マートンの適時二塁打で先制のホームを踏んだ。トップバッター西岡が出塁すれば活気づく。前半戦の“法則”は復帰後も生きていた。終わってみれば「スミ1」勝利。低調な打線は懸案だが、顔色を変えない。

 「1-0で、投手が頑張ってくれた。何試合かそういう試合が続いている。大丈夫かという声もある。『外野』の声は言わせておいて、勝てばいいんです」

 苦しいときほど、平然とする。この日、甲子園で敗退した母校・大阪桐蔭では西谷浩一監督が言い伝えてきたことがある。「西岡はオレがティーを上げていても、しんどい顔を1つもせん。そういうタフさ、精神的な強さなんだ」。多い時はカゴ3箱を打ち込むという過酷なティー打撃。同校後輩で阪神2年目の西田も藤浪も、そんな話を聞き、勝負の世界で生きる「覚悟」を肌で感じていた。

 西岡が1軍に復帰して2戦2勝だ。この日も攻守で活躍。燃える男が帰ってきて、やはり雰囲気は激変した。真夏の大反攻へ。ガッツマンが燃えさかる火をつけた。【酒井俊作】