<中日2-7阪神>◇23日◇ナゴヤドーム
将の怒りはおさまらなかった。阪神和田豊監督(50)は3回のマートンの打球をめぐる判定で猛抗議。5分を超えても納得できなかったが、引き下がれるはずもない。指揮官として初の退場処分を食らった。それでも、熱いハートをナインが引き継いで逆転勝利し、長期ロード勝ち越しも決定。残り37試合。執念星を積み重ねていく。
勝利の儀式に和田監督の姿はなかった。先制点を取り消される判定にも負けず、逆転勝利した選手たち。指揮官はベンチ裏でそっと出迎えた。そして、全員の前で言ったという。
「勝ってくれて、ありがとう」
監督として初の退場試合。絶対に引けない場面で体を張った指揮官と、それに応えた選手。和田監督は怒りと感動が入り交じったような表情で振り返った。
「早い回にいなくなって申し訳なかったけど、選手たちはあきらめないで最後まで戦ってくれた。よくひっくり返してくれた」
3回のマートンが放った打球をめぐる問題シーン。白球はフェンスに1度当たった後、ジャンプした中日平田のグラブに収まったように見えた。二塁走者は本塁に返り、一塁走者もホームへ滑り込んだ。阪神2点先制-、と思われた。
ところが、名幸一塁塁審は右手を上げていた。アウトの判定。和田監督はベンチを飛び出した。塁審に詰め寄ると怒りの表情で抗議した。コーチ陣も同様に詰め寄った。他の審判も集まり、必死で和田監督に説明したが、引き下がらなかった。いや、引き下がれなかった。規定の5分を超過しても、その場を動かない和田監督に退場が告げられた。ベンチへ下がる際、温厚な和田監督がベンチを思い切り蹴り上げた。
「ガンッ!」
やり場のない怒りが込められていた。続いて球審がマイクで場内に説明した。
「和田監督が規定の5分以上の抗議を行ったので、遅延行為として、退場といたします」
このアナウンスを聞くと、今度は中西投手コーチがベンチを飛び出した。
「ミス(ジャッジ)をマイクで説明しろ!」
他のコーチ、選手もベンチから飛び出さんばかりだった。判定が覆らないことはわかっていた。ただ、判定について触れないことが三塁ベンチの怒りに火をつけた。球審が再度、マイクを握ったが、説明の内容は1度目と変わらず。
「ミスを説明せい!」
西岡らが声を荒らげた。審判団とのやりとりは平行線をたどった。最後は監督代行の黒田ヘッドコーチらが選手をロッカー通路へ集合させ、説得した上で試合に戻ることを決めた。
「納得してからゲームに出させたかった。もやもやした気持ちじゃなくて、気持ちを新たに行ってほしかった。ジャッジだから変わらんと思ったけど、ちゃんと見てほしいよな」
逆転劇へと導いた監督代行は、ほっと胸をなで下ろした。それぞれが、それぞれの持ち場で熱いものをぶつけた末の勝利だった。【鈴木忠平】



