<ヤクルト6-0広島>◇7日◇神宮
エースの意地だった。ヤクルト石川雅規投手(34)が2年ぶりの完封で今季初勝利を飾った。プロ13年目で通算121勝の左腕も、今季はこの試合まで6戦未勝利で防御率は6・40。これまでのこだわりを捨ててがむしゃらに1カ月を過ごし、強気の投球スタイルを取り戻して今季初勝利を完封でつかみとった。チームを今季初の3連勝と、上昇気流に乗せた。
力が落ちたのではないか-。そんな周囲の声を、石川は耳にしていた。技巧派左腕が投じる多彩な変化球が、ことごとく打ち込まれる日々が続いた。「いろんな人に言われますけど、結果が出ていないから、当たり前なんです」。ぐっと受け止めつつも、何かを変える必要性を感じていた。
そんなとき、2人の盟友が傷を負った。共にヤクルトを支えてきた館山が右肘の再手術で今季絶望になり、「ライアン」小川も右手の有鉤(ゆうこう)骨鉤骨折で長期離脱した。「館山もライアンも野球をしたくてもできない。僕はいくら打たれていても練習ができる。勝った、負けたと悩んでいる自分はちっぽけだなと」。練習ができる喜びを思い出した。「僕も頑張るって気持ちを伝えたい」と、あえて「頑張れ」とメールを送った。「楽なフォームが身についていたのかな。楽をなくしていきたい」。積み上げてきたものを壊す覚悟を決めた。
とにかく腕を振ることから始めた。4月9日、ナゴヤドーム。普段は入らない登板3日前のブルペンで100球以上、直球主体に投げ込んだ。「原点は右打者の内角。すぐ結果が出るか分からないけど続けたい」と投げ込み量を増やした。
マウンドの立ち位置も変えた。1日の巨人戦からプレート板の三塁側から投げ始めた。「感覚は変わるけどそこから直球を投げたら内角に行くでしょ。内角を突くということ」との明確な強気の意思表示だった。
首位広島を相手に思いの丈をぶつけた。6回には石原に死球を与えたが、ひるまない。「内角を使わないと大けがにつながる」との信念を曲げなかった。内角に強く腕を振った直球が生きたからこそ、同じ腕の振りから放たれたシンカーを広島打線が打ち損じた。6回には高津投手コーチから完封指令を受け、やり遂げた。9連戦のど真ん中で5安打完封勝利を挙げ、チームを今季初3連勝に導いた。「ライアンが戻ってくるまで、今のメンバーで頑張ります」。チームを思う、頼もしいエースの顔で宣言した。【浜本卓也】




