果てしなく広がる未来の輪郭は描かれていた。日本ハム大谷翔平投手(20)は何を思い、何を目指して今季、これから先へと向かうのか。昨季限りで現役を引退し、今年から日刊スポーツ評論家として活動する建山義紀氏(39)が、前途あふれる後輩の実像へ迫った。「3年目」「二刀流の魅力」「夢のメジャーとは」。ポイントになる3つのキーワードごとに互いが、真っすぐに本音をぶつけ合った。【取材・構成=高山通史、本間翼】◆3年目

 日本球界の話題を席巻しながら今季で3年目を迎えた。初の開幕投手が有力。20歳で大黒柱の重責を初めて担う大谷に切り込んだ。

 建山氏

 プロで2年間を過ごし、昨季は素晴らしい成績を残した。今季はエース級の働きが期待されてると思うけれど、自分自身はどう捉えているのか。

 大谷

 昨季は2桁勝たせてもらえましたけれど今季は、不安があります。開幕投手は狙いたいなというか、信頼をしてもらえる立場になりたい。やらせてもらえるかどうか別で、それくらいの気持ちで臨みたい。

 建山氏

 仮に開幕投手に選ばれたら1年間、相手エースとの投げ合いになっていく。どうやってチームに勝利をもたらすか。例えば相手投手より先に降板しない。また7~8回を2~3失点でまとめる。いろいろな考え方があると思う。

 大谷

 昨季も(広島)前田さんら各球団のエース相手に投げさせてもらいました。まず点を取るのが難しい。先取点を許したら、まずいと感じました。1年目は5回を0点で抑えて試合後半に入っていければ上出来だと思っていました。昨季は、まず7回までは抑えようとの考えから入って、終盤戦の方は9回まで投げ切りたいという気持ちだった。技術の向上と気持ちの部分が1年目と2年目では、違ったかなと思います。

 建山氏

 球速の目標値というのはあるのか。また昨季は全体的なレベルを上げようと思って取り組んだ中から生まれたものなのか。そこに興味がある。

 大谷

 正直、高校時代は目標としてありました。160キロは(ヤクルト)由規さんがいましたけれど、日本ではあんまりいない。高校の時に投げたいと思ったので当時は目標を163キロに設定し、必要な練習に取り組んできました。昨年はスピードのあるボールを投げたいというより、試合の中で全体的に球速を上げたいと思った時に一昨年より手応えのあるボールがすごく増えました。意図的ではなく、結果的に球速が上がってくれたので、すごく良かったとは思っています。

 建山氏

 エースの役回りは試合を壊さないことが大前提になる。あとは年間のイニング数と防御率。勝ち負けは操作できない部分。シーズン180イニング以上投げて防御率2点台。最低そこなら、チームが下位に沈むことはないと思う。

 大谷

 年間180回とか長いイニングを投げられるようになりたい。昨季は防御率は後半に落ち込む部分がありましたが、6月と7月は良かった。波を小さくしたい。よくダルビッシュさんが投げている試合は5回か6回まで、中継ぎの方が肩を作らないという話を聞いていました。区切りをつけて投げやすい状況で中継ぎの方に託す。それが一番勝てる道だと思います。