「オレ流」ルーキーが、らしさ満点のスタートを切った。中日の新人合同自主トレが10日、ナゴヤ球場で始まった。ドラフト4位の石川駿内野手(24=JX-ENEOS)は持久走では12人中最下位だったが、自主練習タイムになると途端に生き生き。一番乗りでマシンを動かし、ノーステップで打ち続ける独特の練習を約1時間も続けた。落合博満GMの打撃理論にも興味を示すバットマンがプロでもオレ流で突き進む。

 迷彩柄のリュックを背負い、バット1本かついだ男がフラリと現れた。全体練習後、他の11選手がキャッチボールやティー打撃を行う中、石川は室内の打撃ケージへ直行。新人一番乗りの打撃練習の始まりだ。

 打球はほぼ投手方向から右。それもそのはず。肩幅より少し広い約86センチ間隔で2つのボールを置き、そこに足を合わせてノーステップで打った。腰の回転はほとんどなし。足を上げてタイミングをとる本来の打法とは全然違った。感覚の部分が大きいようだが「調子が悪くなるとステップの幅が変わるので1球1球確認しながらやっている。あとはバットの軌道と手の返しの確認」と説明した。

 約1時間、そのスタイルを貫いた。完璧に打ち返したと思われる打球でも首をひねる。カメラマンに連続写真を依頼してチェックするほどのこだわりよう。「納得のいく打球を2球打ったらやめようと思っていたんですが、1球しか打てなかった。全然ダメでしたね。2球目は夜にまたやります」。1人で打ち込みをするときはいつも「2球」の目標を立てるという。

 打撃技術が低いわけではなく、本人によるとあくまで「究極」を目指すための練習。「決まった練習(全体練習)がある中で、いかに自分のやりたいことをやれるかがポイント。タイミングと時間を見て少しでもやっていきたい」とオレ流の継続を宣言した。

 全体メニューの中で行われた恒例のグラウンド5周走では最下位。しかしバットを握ると別人の輝きを放つ。昨年12月の懇親食事会で、独特の理論を持つ落合GMとバット談議で盛り上がったというのもうなずける。前日の入寮で、自室に持ち込んだ娯楽品は皆無。その様相はさながらサムライだ。オレ流ルーキーの求道の旅が始まった。【柏原誠】

 ◆石川駿(いしかわ・しゅん)1990年(平2)5月26日、滋賀県生まれ。北大津で2度甲子園出場。明大からJX-ENEOS。昨年の都市対抗で3本塁打。178センチ、82キロ。