<北東北大学野球:富士大5-3八戸学院大>◇第6週最終日◇26日◇青森・八戸市運動公園野球場

 大砲がまた火を吹いた。富士大が八戸学院大を下し、全日本大学野球選手権(6月10日開幕、神宮など)出場に望みをつないだ。3回、今秋ドラフト候補の4番山川穂高内野手(4年=沖縄・中部商)が推定飛距離140メートルのバックスクリーン直撃弾。前日25日の第1戦に続く2打点の活躍でチームを勝利に導いた。負ければ終わりの2連戦をものにして八戸学院大と8勝2敗で並び、6月1日の1位決定プレーオフ(岩手・雫石球場)に持ち込んだ。

 衝撃の一撃は、崖っぷちの一戦を制すのに十分だった。3番外崎修汰内野手(3年=弘前実)の左越え3ランで先制した直後だった。4番山川は、カウント3ボールからの外寄りの直球をフルスイング。長距離打者らしい高い放物線を描いた打球は、120メートル先のバックスクリーン中段を直撃した。推定飛距離140メートル-。規格外の1発に「完璧。打った瞬間いくと思った。あれだけきれいにセンターに飛んだのは始めてだと思う」と自画自賛した。

 工夫と才能がかみ合った一打だった。「外角ばかりで勝負してくる」ライバルのマークに対応するため、今春から87センチの超長尺バットを使用している。3冠王に3度輝いた元中日監督の落合博満氏(59)の著書を読んで取り入れたもので、長距離砲の極意も参考にしている。

 ただ、バットは長くなればなるほど操作は難しくなる。昨秋まで相棒だった85センチのものも比較的長く、重心が先端寄りにあって扱いが難しい長距離打者向けのタイプ。チームメートが「(87センチの)そのバットは振れない」とお手上げになる代物だが、山川はあっさり使いこなせるようになった。第1打席の前には1500グラムの超重量バットでスイングを確認。大学入学後初の1季3本目という数字が、その成果を物語る。

 5回には犠飛を放ち、負ければ終わりの2連戦で連日の2打点。この日は今季初めて三塁の守備にも就いた。11年秋、12年秋の八戸学院大とのプレーオフはいずれも制した。「勝てるときの、良いときの雰囲気に近い。このままいきたい」。6月1日のプレーオフも、この男の打棒にかかっている。【今井恵太】