王者井岡一翔(26=井岡)が、日本歴代6位に並ぶ世界戦10勝目を挙げた。同級10位のロベルト・ドミンゴ・ソーサ(30=アルゼンチン)を攻守ともに圧倒し、3-0の大差判定で下して初防衛に成功。4週前に左太ももを痛めるアクシデントを乗り越え、祖母ミツ子さんの71歳の誕生日を勝利で祝った。井岡の戦績は19戦18勝(10KO)1敗となった。

 完勝だった。井岡が、大差判定で初防衛を果たした。ジャッジ3人ともに10点差以上をつけた。日本人初の世界戦3階級でのKO勝利こそ持ち越しになったが、ソーサを寄せつけなかった。「甘くはない試合と覚悟していた。KOしたかったけど、判定になったけど、勝ったことが良かった」とうなずいた。

 左のボディーでリズムを作った。4回は右脇腹にダブルを打ち込んだ。ソーサが警戒してガードを下げると、今度は右のストレートからボディーと上下に打ち分けた。たまらず、うずくまりそうになった相手を何度も追い詰めた。12回も連打で猛攻に出た。主導権を最後まで渡さなかった。

 フライ級で真の王者になるため、昨夏から徐々にモデルチェンジしてきた。リミット体重がミニマム級に比べて3・2キロ増える(50・8キロ)分、パンチをもらえばダメージも大きくなる。そこで、前傾姿勢を深くした。より上半身を反らせることができ、防御範囲が拡大。スタンス幅も広め、前後左右に攻撃的に動くことも可能になった。「練習してきたことが半分以上は出せた」と納得した。

 アクシデントも乗り越えた。約4週間前のロードワーク中に、左太ももを痛めた。歩行時も足を引きずるほどで、数日間はスパーリングできず、調整に狂いが出た。だが、常に前向きな王者の心には影響なかった。「精神的に沈むことはないですよ。普通(の体調)ってありがたいなあ、と思った」と笑い飛ばした。

 祖母の誕生日を勝利で祝い、フライ級防衛ロードはスタートした。次戦は大みそか。陣営は、前王者レベコとの再戦も含めた防衛戦をこなし、来春にも他団体王者との統一戦を視野に入れる。

 父一法会長は「パンチ、体の当たり、手数、まだまだ磨きをかけないと」と、さらなるレベルアップに取り組む考えだ。「この階級には井岡一翔がいることを、アピールしたい。この階級で4団体制覇できればいい」と井岡。フライ級最強の称号を手にするまで、まだまだ強くなる。【木村有三】

 ◆井岡一翔(いおか・かずと)1989年(平元)3月24日、堺市生まれ。元世界王者井岡弘樹氏のおい。08年東農大を中退してプロ転向。当時国内最速の7戦目で世界王座。今年4月に世界最速18戦目で3階級制覇。165センチの右ボクサーファイター。