前夜の激闘を制した両雄がハイレベルなエールを交換した。国内歴代2位の11度目の防衛に成功したWBC世界バンタム級王者山中慎介(33=帝拳)と、3階級制覇を達成した同スーパーバンタム級王者長谷川穂積(35=真正)が17日、大阪市内のホテルでそろって会見。長谷川は山中に具志堅用高の歴代最多V13を上回るV15を期待し、山中は長谷川に「打たせずに打つ」戦いでの防衛継続を願った。

 約5年5カ月ぶりに王座に返り咲いた長谷川と、豪快なKOでV11を果たした山中が、柔らかな表情で席を並べた。ともに激闘を乗り越えたばかりとあり「まずは休みたい」と声をそろえたが、そこは親交の深い2人。山中に今後期待することを聞かれた長谷川が“先制攻撃”を仕掛けた。

 「ここまで来れば15回を目指して欲しい。誰も破れない記録を作ってほしい」。あと2に迫った具志堅氏の記録をさらに2上回る大記録。突然のエールに、やや困惑気味の山中は「回数というよりも、1戦1戦の積み重ねだと思っている。その中で、統一戦は常に希望している」と強敵を退けながら、防衛を続けていきたい姿勢を示した。

 一方の山中は、9回終盤に紙一重の打ち合いを展開した長谷川の試合を引き合いに「あれが長谷川さんの魅力だなと感じつつ、それ以前の戦い方をこれからもしてもらいたい」とジョーク交じりに“反撃”。「打たせずに打つ」長谷川本来の戦いを期待した。

 山中は、試合前に長谷川から「勝って、旅行にでも行こう」と言われていたことにも触れ、「あれはうそだと思うので、せめて食事にでも行きたい」と“追い打ち”。今後の予定を聞かれた長谷川が「家族で旅行にでも行きます」と答えると、「それは自分も一緒ですか?」と突っ込みを入れるなど、先輩王者をたじたじとさせて笑いを誘った。

 関係者の間で「年間最高試合が2試合続いた」と高い評価を受けた名王者2人。当面は心身のリフレッシュを優先する。【奥山将志】